二つまたはそれ以上の二重結合が単結合と交互に存在する結合をいう。二重結合が孤立して存在する場合とは著しく異なる物理的および化学的性質を示す。共役二重結合をもつ有機物としては,ブタジエンなどのポリエンや,ベンゼンをはじめとする芳香族化合物などがある。ブタジエン分子の化学式はH2C=CH-CH=CH2と記されるが,平面分子で,中央のC-C単結合の長さは,普通の単結合,たとえばエタンの単結合1.54Åより短く,1.48Åである。このことは分子軌道法ではその結合次数が1よりも大きくなることから説明され,共鳴の立場からいえば,
のような構造が多少関与しているとして説明される。また,単結合および二重結合を作る炭素原子の混成の変化も中央の単結合の短縮に寄与している。化学式の示す二重結合がその位置に局在していないことは,いろいろの化学反応にも現れる。たとえばブタジエンに1molの臭素を付加させると,1,2-付加物のほかに1,4-付加物ができる。
1,4-付加反応では二重結合が一つ中央に移動したことがわかる。一般に,多くの共役二重結合をもつ分子は,それと関連した非共役分子に比べて電子吸収スペクトルが長波長側にあり,可視部の光を吸収するので色がついている。たとえばβ-カロチンは11個の共役二重結合をもっていて赤い。ベンゼンのように共役二重結合が環を作った分子では,6個の炭素原子間がまったく平均化されていて,単結合と二重結合の区別がなくなり,分子は正六角形である。
執筆者:佐野 瑞香
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2個以上の二重結合がそれぞれ単結合をはさんでつながっているとき,これらの二重結合を共役二重結合という.共役二重結合系が鎖状をなすものの代表としてはブタジエンやポリエンがあり,また環状をなすものとしてはベンゼンやペンタセン,ヘキサセンなどのポリアセンをはじめ芳香族化合物がある.個々の二重結合はσ結合とπ結合とからなり,π結合をつくるπ電子は易動性(非局在性)を有するため,単結合の間でもπ結合を形成することができる.このようにして単結合をはさんだ2個の二重結合は共役することができる.2個の二重結合が共役して単結合の間にπ結合をつくると,両側に孤立したπ電子が残されることになる.これは共役による寄与は鎖状共役系の場合,たとえばブタジエンでは中央の単結合は二重結合性を帯び,1,4-付加体をつくりやすくなるという事実に現れている.また,環状共役系の場合は,単結合と二重結合が交替することによって孤立π電子を残すことなくπ結合が形成される.このため,たとえばベンゼンでは,どの結合も長さが等しく単結合と二重結合の中間の長さになっている.[別用語参照]共鳴
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
二つ以上の二重結合が一つの単結合を挟んで構成されている結合系をいう。ブタジエンはその代表例であるが、二重結合は1と2、および3と4の間に局在化しているようにみえる(
)。しかし、これらの間に存在するπ(パイ)電子は1から4の炭素の間を流れるので、2と3の間にも二重結合性が生ずる。一般に共役二重結合をもつ分子では、非局在化したπ電子系ができる。環状になった共役結合系の代表はベンゼンで、ケクレが考えたように、6個の炭素が同等に結合しており、二重結合がある炭素間に局在してはいない。石墨(グラファイト)は共役二重結合が平面的に広がっており、したがって良電導体である。[下沢 隆]
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