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『美味しんぼ』問題 おいしんぼもんだい

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知恵蔵2015の解説

『美味しんぼ』問題

「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で連載中のマンガ『美味しんぼ』の「福島の真実編」内での描写に端を発した一連の動きのこと。
2014年4月28日発売号に掲載された第604話「福島の真実編 22」で、主人公が福島の原発見学後に鼻血を流す描写があり、次号以降では実在する井戸川克隆・前福島県双葉町長や他の登場人物が被曝(ひばく)との関連に言及したため、読者や福島県、内閣閣僚から「風評被害を助長する」との批判が相次いだ。
『美味しんぼ』は原作・雁屋哲、作画・花咲アキラによるグルメマンガで、主人公の新聞記者・山岡士郎とその父親である海原雄山の料理対決を軸とした作品である。1983年の「ビッグコミックスピリッツ」20号より連載を開始、単行本は2014年6月現在で110巻を数え、累計発行部数は1億2千万部超とされている。1987年に第32回小学館漫画賞青年一般部門を受賞。88~92年にテレビアニメ(日本テレビ系列)が放映され、94~99年には全5話で実写テレビドラマ化(フジテレビ系列)、96年には森崎東監督により実写映画化されている。日本のグルメブーム火付け役ともいわれ、作中には食に関する社会問題や政治に関わる描写が多く、化学調味料や牛乳の製法などをテーマにした際は業界からの抗議を受けたこともある。
福島に関する描写では、4月28日発売号で山岡が福島第1原発を見学した後、疲労を訴え鼻血を流す。診察した医師は「福島の放射線とこの鼻血とは関連づける医学的知見がありません」とするが、井戸川前町長はマンガの中で「福島では同じ症状の人が大勢いますよ。言わないだけです」と発言している。
これにより読者から批判が寄せられ、スピリッツ編集部は「鼻血や疲労感の表現は、綿密な取材に基づき、作者の表現を尊重して掲載させていただきました」との声明を出し、風評被害を助長する意図はなかったとした。双葉町は5月7日に小学館へ抗議文を提出した。
続く5月12日発売号では、井戸川前町長はマンガの中で鼻血や疲労感は被曝によるとした上で「私はとにかく、今の福島に住んではいけないと言いたい」と発言している。また、前町長同様に実在する荒木田岳福島大准教授もマンガ内で「福島を広域に除染して人が住めるようにするなんて、できないと私は思います」と発言。同19日発売号の中では、海原が「私は一人の人間として、福島の人たちに、危ないところから逃げる勇気を持ってほしいと言いたいのだ」と発言し、山岡は自分にできることはと問われ「福島を出たいという人たちに対して、全力を挙げて協力することだ」と決意する内容である。
19日発売号では「『美味しんぼ』福島の真実編に寄せられたご批判とご意見」と題した特集も掲載し、有識者13人の意見や福島県庁、同県双葉町、大阪府・大阪市から送られた抗議文を10ページにわたって紹介した。合わせて、「ご批判、お叱りは真摯(しんし)に受け止め、表現のあり方について今一度見直して参ります」などとする編集部の見解が示された。編集部は、一連の騒動とは関係なく、以前から決まっていたこととしているが、以後作品は一時休載している(14年6月18日現在)。

(若林朋子  ライター / 2014年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵2015」
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