改訂新版 世界大百科事典 の解説
アウストラロピテクス・ガルヒ
Australopithecus garhi
前期更新世の猿人の一種。ガルヒ猿人とも呼ばれる。アウストラロピテクスは〈南のサル〉,ガルヒは〈驚き〉という意味。エチオピアのミドル・アワッシュのブーリで,1999年にホワイトT.WhiteやアスフォーB.Asfawたちによって発見された頭骨や四肢骨を含む個体骨格の化石であり,この頭骨(BOU-VP-12/130)が模式標本。いわゆる華奢型猿人の一種に含まれるが,顎はかなり大きい。年代は約250万年前。頭蓋腔容積(脳容積より10%ほど大きい)は450mlと推定され,アウストラロピテクス・アファレンシスよりもやや大きい。歯は全体として非常に大きく,歯列は前方に突出している。臼歯もアファレンシスより大きいが,頑丈型猿人のように臼歯のみが巨大化しているわけではない。眼窩上方が残っていないので,眼窩上隆起の発達は不明。
上腕骨は猿人としては普通だが,大腿骨は猿人としては長いので,腕と脚の比は猿人(たとえばアウストラロピテクス・アファレンシスのルーシー)よりは原人(たとえばホモ・エルガスターのトゥルカナ・ボーイ)の状態に近い。以上の形態特徴から判断し,ガルヒはアファレンシスの子孫であって,後のホモ属の祖先とみなされている。
アウストラロピテクス・ガルヒの発見された地層からは,石器と共に大型動物の骨が見つかり,その骨にカットマークがあるので,ガルヒが肉を食べたり,骨を割って骨髄を取り出したりしたと考えられている。
→アウストラロピテクス・アファレンシス →猿人 →華奢型猿人
執筆者:馬場 悠男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報