ビルマ(現ミャンマー)独立運動の指導者。中部ビルマのマグエ地方で弁護士を父とし、6人兄弟の末子として生まれる。ラングーン大学(現ヤンゴン大学)在学中に反英独立運動に身を投じ、学生運動を指導するかたわら、1938年には独立を掲げる急進政党タキン党に入党し、その書記長になった。第二次世界大戦の前夜、日本のビルマ工作機関は、アウンサンの率いるタキン党の勢力に目をつけ、彼らに独立援助を約して海南島で軍事訓練を施した。アウンサンは日本軍の育成したビルマ軍の司令官、あるいは軍政下の国防大臣として一定の対日協力を余儀なくされるが、独立のかわりに軍政を与えた日本軍に対し、共産主義者たちとともに地下抵抗運動を組織した。1944年には反ファシスト人民自由連盟を結成、翌1945年3月にはビルマ国軍の反日決起を指導した。さらに日本軍の敗退後、復帰したイギリスに対しては全国ストを背景に交渉を続け、1947年1月アウンサン‐アトリー協定によって独立実現にこぎつけたが、同年7月19日、右翼政治家の凶弾に倒れた。彼はいまなおビルマ独立のシンボルとして国民の敬愛を集めている。なお、ミャンマーの反政府民主化運動の指導者アウンサンスーチーは、アウンサンの長女である。
[齋藤照子]
『根本敬著『現代アジアの肖像 アウン・サン』(1996・岩波書店)』
ビルマ(現,ミャンマー)の政治家。独立運動の指導者。オン・サンと誤って表記されることもある。マグエ県ナッマウ町の出身。1936年ラングーン大学在学中,学生連盟委員長のウー・ヌと共に学生のストライキを指導。卒業後〈われらビルマ人連盟〉に入党し,タキン・アウンサンと名乗って政治活動を開始した。40年バモーの率いる貧民党と連盟とが合併して自由ブロックを結成すると,事務局長に選ばれたが,同年逮捕状を逃れて潜行,アモイへ密出国し,11月参謀本部の鈴木敬司大佐の手引きで来日。〈南機関〉の協力を得て,41年ビルマを脱出させた青年30人と共に海南島で軍事訓練を受け,同年末ビルマ独立軍を結成,日本軍と共にビルマに進撃した。42年鈴木の離任に伴い改編されたビルマ防衛軍の司令官に就任。43年バモー内閣の国防相。44年共産党や人民革命党と協議のうえ,抗日戦線〈反ファシスト人民自由連盟〉を結成,45年3月に蜂起。10月連盟総裁として政権の担当をビルマ総督に要求,46年9月行政参事会副議長に任命された。47年1月〈アウンサン=アトリー協定〉に調印,独立準備に没頭したが,7月19日閣僚6人と共に保守派の政治家ウー・ソーの配下に暗殺された。
執筆者:大野 徹
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1915 - 1947.7.19
ビルマの政治家。
元・反ファシスト人民自由連盟総裁,元・行政参事会副議長。
マグエ県ナッマウ町(ビルマ)生まれ。
ラングーン大学に学ぶ。
学生時代に反英独立運動を指導し、1938年に急進政党タキン党に入党、タキン・アウンサンと名乗って活動した。’40年逮捕を逃れてアモイに出獄し、日本のビルマ工作機関の協力で海南島で軍事訓練を受けて、ビルマ独立軍を結成した。’44年反ファシスト人民自由連盟を結成し、’45年に連盟総裁としてビルマ総督に政権譲渡を要求し、独立実現に至ったが、’47年保守派の政治家に暗殺された。ビルマ独立のシンボルとしていまなお国民の敬愛を集めている。
出典 日外アソシエーツ「20世紀西洋人名事典」(1995年刊)20世紀西洋人名事典について 情報
1915~47
ビルマ独立運動の指導者。反英運動に従事し,1940年来日。海南島で軍事訓練を受け,41年ビルマ独立義勇軍の高級参謀(少将)となる。その後,ビルマ防衛軍の司令官,ビルマ国軍成立後は国防大臣を歴任。44年反ファシスト人民自由連盟の結成とともに議長に就任し,45年3月より抗日反乱を指揮。同年8月,国軍を引退し,イギリスとの独立交渉にあたる。46年事実上の内閣を組織し,47年独立の確約をとりつけ,少数民族との間にパウンロン協定を締結。同年7月19日暗殺される。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報
…バモーを首班とする中央行政府が設けられ,43年には東条内閣によってビルマ独立が許容された。しかし日本によるビルマ独立は見せかけにすぎず,対日不信を募らせたアウンサンらは,45年3月ビルマ軍を率いて蜂起,全土で抗日運動を展開した。
[独立]
終戦とともにビルマにはイギリスの民政が復活した。…
※「アウンサン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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