ベトナムの民族衣装。アオザイとは長い上衣の意。中国服式の立襟で,袖まわりが細く手首までを隠す長衣。前裑(まえみごろ)は右脇であわせ,腰で前後に分かれる裙(くん)が膝下に及び,下衣にクアンと呼ぶズボンをはく。今日では女性の外出時の衣装である。ベトナム人の衣服は中国文化の影響を受けながらも,10世紀の独立王朝成立後にしだいに独自の形を作ったが,15世紀初頭,明の支配期に女子の袖の狭い長衣が禁ぜられ,レ(黎)朝景興年間(1740-86)にはクアンナム(広南)の領主が清の衣服の着用を命ずるなど,為政者によって中国風の服装が強制されたことがある。一方,景治年間(1663-72)には女子のクアン着用を禁じ,逆にグエン(阮)朝明命年間(1820-40)にはこれを強制する等,女性の衣服が規制を受けたことも少なくない。しかしグエン朝で清にならった官人の朝服を簡略にした衣服がアオザイと呼ばれて民間に普及し,やがて女性の正装となった。現代のアオザイは,1930年ころからハノイの美術家たちが提唱した服装改良運動によって,欧米風感覚が加えられた形になっている。
執筆者:川本 邦衛
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ベトナム女性の民族衣装で、「アオ」は服、「ザイ」は長いの意、つまりは「長服」である。構成は中国服の長衫(チャンサン)と褲子(クーツー)という軽やかなズボンの組合せで、長衫の腰から裾(すそ)にかけて長いスリットがあるので歩くたびに裾のほうがひらひらと大きく揺れるのが特徴である。このズボンはベトナム語でクアンとよばれ、白が正装であるが、略式では黒などもはかれる。本来は絹であるが、他の素材も用いられる。ベトナム解放戦争後はアオザイもテト(旧正月)や結婚式などの場合にのみ着られることが多くなった。戸外ではノンとよぶあご帯付きの笠(かさ)をかぶる。
[石山 彰]
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…衣食住にわたる生活文化にも中国文化が色濃く反映しているが,単なる模倣に終始せず,ベトナムの風土に根ざした民族の知恵が巧みにいかされている。女性の民族服アオザイはその好例で,立襟の長衣と前後同型,幅広の白無地ズボンの組合せからなる。主食は米(粳米)で,1日2食が原則である。…
※「アオザイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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