あおり運転(読み)あおりうんてん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「あおり運転」の意味・わかりやすい解説

あおり運転
あおりうんてん

他の車両通行を意図的に妨害する運転。車間距離を極端に詰めることや、急な進路変更を行うこと、他の車の前で急ブレーキをかけることなどが該当する。2017年(平成29)6月に東名高速道路上で起きた死亡事故(追い越して進路をふさぐように車線変更や減速を繰り返す妨害運転を受けたことで、停止を余儀なくされた車両が大型貨物自動車に追突されたもの)がきっかけとなって、同様の悪質・危険な行為が「あおり運転」として社会問題となった。2020年(令和2)に道路交通法と同施行令が改正され、他の車両の通行を妨害する目的で、急ブレーキ禁止違反や車間距離不保持、進路変更禁止違反などの違反行為で、相手方の車両に交通の危険を生じさせるおそれのある方法による運転をした場合を、妨害運転として、3年以下の懲役または50万円以下の罰金(違反点数は25点で運転免許の取消処分対象、欠格期間2年)とし、それによって高速自動車国道等で他の自動車を停止させるなどをした場合を、最長で5年以下の懲役または100万円以下の罰金(違反点数は35点で運転免許の取消処分対象、欠格期間3年)とすることとした。また、同年自動車運転死傷行為処罰法が改正され、妨害目的の運転による事故を広く危険運転致死傷罪の対象となりうるように、走行中の車両の前方で停止する行為などによる場合が追加されている。

[田村正博 2021年3月22日]

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知恵蔵 「あおり運転」の解説

あおり運転

走行中に、他の特定の車両に対して、故意に運転を妨害したり威圧したりする行為。前を走る車両との車間距離を極端に詰める行為や、幅寄せや蛇行運転をしたりする行為のほか、不必要な急ブレーキ・クラクション・ハイビームなどがあおり運転に該当する。
これらの行為は、道路交通法の車間距離の保持(第26条)や進路変更の禁止(第26条の2)、急ブレーキの禁止(第24条)などの違反のほか、自動車運転死傷処罰法(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)の危険運転致死傷罪(妨害目的運転)や刑法の暴行罪に該当することがある。殺人罪に問われ、殺意が認定されたケースもある。
2017年6月に神奈川県の東名高速道路で、あおり運転などの危険行為が原因で起きた死亡事故をきっかけに、悪質・危険な運転による事故を防ごうと、交通取り締まりや啓発活動が強化された。あおり運転による死亡事故は以前からあったが、ドライブレコーダーの普及で危険な運転の映像が事故の捜査や報道に使用されるようになり、社会の問題意識が急速に高まった。18年6月には、全国の警察本部が高速道路上であおり運転の一斉取り締まりを初めて実施し、7日間で計1296件の違反を摘発した。

(原田英美 ライター/2019年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

知恵蔵mini 「あおり運転」の解説

あおり運転

危険運転の一種で、前方を走行する車両に対する嫌がらせ行為。車間距離を極端に詰めて道を譲るように強要する、猛スピードで追い回す、ハイビームやパッシング、並走しての幅寄せなどで威嚇する、といった行為が該当する。車間距離を極端に詰めるあおり運転は道路交通法違反であり、高速道路での違反の場合は3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金、一般道での違反の場合は5万円以下の罰金などの罰則が科される。あおり運転によって交通事故を引き起こし、相手や第三者を死傷させた場合には危険運転致死傷罪が適用され、負傷事故で最長15年以下、死亡事故で最長20年以下の懲役に処される可能性がある。

(2017-10-17)

出典 朝日新聞出版知恵蔵miniについて 情報

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