自動車の運転によって死傷事故を起こした者の処罰を定めた法律。正式名称は、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(平成25年法律第86号)。
自動車(原動機付自転車を含む)を運転して人を死傷させる事故を起こした者は、他の事故の場合と同じく、刑法の業務上過失致死傷罪(刑の上限は懲役5年。1968年の改正前は3年)の対象とされてきた。2001年(平成13)の刑法改正により、危険運転致死傷罪が新設されて悪質・危険な運転行為により人を死傷させた場合の罰則が強化され(致死の場合の上限は有期刑の上限と同じで懲役15年。2004年の刑法改正で懲役20年)、他方で過失による軽傷事故の場合の刑の裁量的免除の規定が設けられた。2007年の刑法改正により、自動車による事故の実態に応じた適正な処罰(著しく重い過失の場合における刑罰強化)の観点から、業務上過失致死傷罪から分離し、自動車運転過失致死傷罪が設けられた(刑の上限は懲役7年もしくは禁錮7年)。
危険運転致死傷罪に該当しない悪質・危険な運転による死傷事故の遺族から、自動車運転過失致死傷罪の対象にしかならないことへの批判の声があがり、社会的にも大きく取り上げられたことを受けて、運転の悪質性、危険性の実態に応じた処罰を可能とするため、2013年に本法が制定された(施行は2014年)。
内容としては、刑法で定められていた危険運転致死傷罪と自動車運転過失致死傷罪のほか、アルコール、薬物または病気の影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で運転し、正常な運転が困難な状態に陥って人を死傷させた場合について新たな危険運転致死傷罪が設けられている(刑の上限は懲役15年もしくは禁錮15年)。あわせて、事故後にアルコール等の影響の有無および程度が発覚することを免れる行為をした場合について、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪が設けられたほか、無免許運転の場合に刑を加重する規定が設けられている。
2020年(令和2)の法改正により、あおり運転に対する処罰規定の整備として、停止行為を含む妨害目的運転により人が死傷した場合が、危険運転致死傷罪の対象行為に加えられた。
[田村正博 2021年1月21日]
(2014-5-21)
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