アカガエル(読み)あかがえる(英語表記)brown frog

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アカガエル」の意味・わかりやすい解説

アカガエル
あかがえる / 赤蛙
brown frog

両生綱無尾目アカガエル科に属するカエルのうち、背面の地色が赤みがかった種の総称。ユーラシアと北アメリカの北部を中心に分布し、世界でもっとも低温に適応したカエルである。北海道のエゾアカガエルRana chensinensis、本州、四国、九州のニホンアカガエルR. japonicaヤマアカガエルR. ornativentris、タゴガエルR. tagoi対馬(つしま)のツシマアカガエルR. tsushimensis、チョウセンヤマアカガエルR. dybowskii、琉球諸島(りゅうきゅうしょとう)のリュウキュウアカガエルR. okinavanaの7種が分布し、中国大陸にはアムールアカガエルR. amurensisその他が分布する。これらは互いに近縁一群を形成し、人工的に雑種のできる組合せが多い。

 小形のツシマアカガエルで体長約3センチメートル、大形のニホンアカガエルで約6センチメートル、雌はこれよりやや大きい。背側部に2本の隆条があり、淡い背中線および両眼瞼(がんけん)を結ぶ逆三角形の黒斑(こくはん)をもつ種が多い。背面は黄褐色、赤褐色または暗褐色、腹面は白色か淡赤色。繁殖期の雄の前肢親指には顕著な婚姻瘤(こんいんりゅう)が発達する。吸盤はない。山沿いの地域に多くみられ、一般に冬から春にかけて溜池(ためいけ)、水田、溝などの止水に産卵する。多数の卵を含む大形卵塊を産む種が多いが、リュウキュウアカガエルは小形の卵塊をいくつも産む。タゴガエルは山地にある源流伏流水に産卵し、卵は大きく数は少ない。産卵期以外は陸上で生活し、水辺からかなり離れた場所でみかけることが多い。鳴嚢(めいのう)は発達せず、鳴き声は弱い。

倉本 満]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アカガエル」の意味・わかりやすい解説

アカガエル
brown frog

カエル目アカガエル科 Ranidaeのうちで,赤褐色の体に眼のうしろから鼓膜後方までを広くおおう黒色斑をもち,背面に短い隆条群がなく,両側には眼の後端にはじまって後肢の基部まで続く完全な隆条をそなえた一群のカエル類をいう。おもに北半球の温帯地方に分布するが,北極圏まで広がっているものもある。日本には6種ほどが知られているが,本土に広くみられるものは,体長 6cmぐらいで頭が細く,おもに平地にすむニホンアカガエル Rana japonica,頭が丸く,顎の下側に黒っぽい斑紋があり,山地にすむヤマアカガエル,体長 4cmぐらいの小型種で顎の下側が全体に黒っぽく,おもに山地にすむタゴガエル R. tagoiなどである。アカガエル類は日本にいるカエルのうちでは最も早く産卵し,場所によっては 12月頃から繁殖期に入る。池や沼などに大きい卵塊を産むものが多いが,タゴガエルは山地の伏流水などに大型の卵を比較的少数個産みつける。

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