ニセアカシア(読み)にせあかしあ(その他表記)locust-tree

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニセアカシア」の意味・わかりやすい解説

ニセアカシア
にせあかしあ
locust-tree
[学] Robinia pseudoacacia L.

マメ科(APG分類:マメ科)の落葉高木。枝葉エンジュに以ているが刺(とげ)があるので和名ハリエンジュ針槐樹)という。高さ15~20メートル。樹皮は灰褐色で縦に割れ目ができ、枝に托葉(たくよう)の変化した刺が対生する。葉は互生し、奇数羽状複葉。小葉は9~19枚、長楕円(ちょうだえん)形で長さ2~3.5センチメートル、質は薄く、縁(へり)に鋸歯(きょし)はない。5~6月、葉腋(ようえき)に長さ10~15センチメートルの総状花序を垂れ下げ、蝶(ちょう)形で長さ1.5~2センチメートルの白色花を多数開く。芳香があり、良質の蜜(みつ)が多く、よい蜜源になる。果実は広線形で長さ7~8センチメートル、平たい鞘(さや)になり、毛はない。中に腎(じん)形で扁平(へんぺい)な長さ5~6ミリメートルの黒褐色の種子を4~7個含む。北アメリカ原産。1874年(明治7)ごろ街路樹、庭園樹用として輸入された。砂防用植栽木、肥料木に使われ、材は堅くて重く、土木用材、薪炭材に、葉は飼料とする。北海道などでアカシアと誤称されているのは本種である。品種に刺のないチンタオトゲナシニセアカシア、低木状のエイコクトゲナシニセアカシアがあり、葉が黄緑色の品種もある。陽樹で乾燥に耐え、耐寒性が強く、土地を選ばず、成長は速い。萌芽(ほうが)力も強く、根から新しい苗が出る。繁殖は実生(みしょう)、根分け挿木などにより、挿木は根挿しが容易である。

小林義雄 2019年11月20日]

文化史

本来のアカシア(属)は花弁が同形で小さく、かわりに多数の雄しべが球状に展開して目だつ点で、蝶形花(ちょうけいか)の本種とは区別できる。アメリカ・インディアンは種子を食用にした。ただし、植物体にはクリサロビン、ピペロナール、サンギナリンなどの有害物質を含む。札幌のニセアカシアは、1881年(明治14)東京・青山開拓使試験場から苗が移され、1885年停車場通りに植えたのが始まりとされる。北原白秋の『道』は1925年(大正14)白秋が札幌を訪れ、郷里柳川(やながわ)のニセアカシアを思い出してつくったと伝わる。

[湯浅浩史 2019年11月20日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ニセアカシア」の意味・わかりやすい解説

ニセアカシア
false acacia
Robinia pseudo-acacia L.

一名ハリエンジュ。英名ではblack locust,yellow locustともいう。北アメリカ東部~中部原産のマメ科の落葉高木で,世界各地に植えられる。日本には明治はじめころ渡来した。じょうぶで生長が早く,アカシアの俗称で,街路樹,砂防用などとして広く植えられた。根から萌芽する性質が強く,しばしば野生化している。高さ10~15m,直径30~40cm程度までがふつうだが,大きいものでは高さ30m,直径80cm~1.2mになることがある。樹皮は褐灰色でたてに深く割れる。葉は互生し,長さ20~35cmの奇数羽状複葉で,7~19枚の小葉がある。小葉は長さ2~5cmの楕円形で,全縁または上部に細鋸歯がある。葉柄の基部に托葉が変化した1対のとげがある。このとげの生じないものをトゲナシニセアカシアvar.inermis DC.という。5~6月ごろ,長さ10~15cmの総状花序を下垂し,白色の蝶形花をつける。花は芳香強く,蜜(みつ)に富み,良質の蜜源植物の一つになる。生長が早いので薪炭材として利用された。材は環孔材で,心材暗黄褐色~褐色,気乾比重約0.77,耐朽性が高く,土木用材のほか器具や細工に用いる。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニセアカシア」の意味・わかりやすい解説

ニセアカシア
Robinia pseudo-acacia; black locust

マメ科の落葉高木で,ハリエンジュとも呼ばれる。北アメリカ原産で,1877年頃日本に伝えられ,現在各地で庭木や街路樹として植えられている。また崩壊性の地形にもよく育つので砂防工事などにも植えられる。幹に縦に走る深い割れ目ができる。有柄の大きな奇数羽状複葉を互生し,小葉は卵形または楕円形で,各葉に9~19枚つく。托葉は通常針状のとげになる。初夏に,その年伸びた小枝の葉腋からフジに似た大きな総状花序を垂らし,白色または淡紅色の蝶形花を多数つける。花は芳香があり蜜を出す。果実は広線形の莢で,平たく無毛。一般にアカシアと呼ばれているが,本来のアカシア属 Acaciaは同じマメ科ではあるが蝶形花をつけない一群で,オーストラリアやアフリカなど熱帯地方に多く,冷温帯性のこのニセアカシアとはまったく別である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「ニセアカシア」の意味・わかりやすい解説

ニセアカシア

ハリエンジュ

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android