日本大百科全書(ニッポニカ) 「アスター」の意味・わかりやすい解説
アスター(キク科)
あすたー
China aster
[学] Callistephus chinensis Nees.
キク科(APG分類:キク科)の半耐寒性一年草で中国北部から北西部が原産。サツマギク、エゾギク(蝦夷菊)ともいう。ユウゼンギクをアスターとよぶこともあるが、普通アスターといえば本種をさす。水揚げ、花もちがよく夏季に需要が多い。花期は6~10月で早生(わせ)、中生(なかて)、晩生(おくて)種があり、花色は赤、桃、紫、青、淡黄、白と豊富である。各枝の頂に頭状花をつけるが、茎上部でよく分枝し開花する箒立(ほうきだち)性種と、下部から分枝して孫枝の少ない枝切り用種があり、前者は日本育成品種が多く、後者は欧米のものが多い。世界中のアスターは約300種あるが、日本での実用品種は139種(2019)である。高性種は草丈60センチメートル~1メートル以上あり、大部分が切り花用。矮性(わいせい)種は15~30センチメートルでよく分枝し、サイネリア状に花をつける品種も作出され、花壇用、鉢物用とされる。花型は、一重(ひとえ)咲き、半八重(やえ)咲き、管弁(かんべん)咲き(吹詰め咲き)、菊咲き、瓦(かわら)状咲き、ポンポン咲き、コメット咲き、狂い咲き、駝鳥(だちょう)咲き、芍薬(しゃくやく)咲きなど、豊富である。
[吉次千敏 2022年1月21日]
栽培
寒冷地での栽培が盛んである。フレーム内では2~3月に播種(はしゅ)。露地では4~5月播種し盆のころ出荷。また6月下旬播種で秋の彼岸のころ出荷、9~10月播種で翌年6月出荷とする。温室での促成栽培は秋播(ま)きし1月定植、12℃以上で管理、日没後3~4時間長日処理すれば4月出荷が可能である。切り花用は、床(とこ)播きまたは直(じか)播きとするが、花壇用には床播きし1回仮植えののち、20~30センチメートル間隔に定植する。鉢植え用は5号鉢に1株植えとする。栽培土壌は「サンヒューム」「クロルピクリン」などで消毒する。種子もよく消毒して播種し、圃場(ほじょう)では病害虫に注意する。
[吉次千敏 2022年1月21日]
アスター(John Jacob Astor)
あすたー
John Jacob Astor
(1763―1848)
アメリカの毛皮商人、富豪。ドイツに生まれる。イギリスで短期間の修業ののち渡米、船中で得た知識をもとに毛皮商人となる。1808年アメリカ毛皮会社を設立、1811年にはコロンビア河口にアストリアと称する毛皮取引所を建設し、五大湖から太平洋岸に至る地域の毛皮交易を独占した。さらにニューヨーク市の不動産事業で巨富を築き、当時のアメリカ最大の富豪の一人となった。
[小林袈裟治]
『K. W. PorterJohn Jacob Astor, 2 vols. (1931, Cambridge, Mass.)』