アダド(読み)あだど(英語表記)Adad

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アダド」の意味・わかりやすい解説

アダド
Adad

バビロニアおよびアッシリアパンテオンの偉大なる気象神。風の主エンリルが地上界の神になったとき,そのかわりに雷雨の支配権を握った。アダドは2つの性格,すなわち,雨風によって肥沃をもたらす豊穣神としての性格と,暴風雨,雷,洪水によって自然を破壊し,暗黒と死をもたらす神の性格とをもつ。また,それらの性格から,シャマシュとともに未来を喚起する特権をもつ託宣の神としても崇拝された。天神アヌの息子あるいは大地の神ベルの息子と呼ばれる。聖動物は雄牛とライオンシンボルは糸杉,牛の背に乗り,片手に稲妻を持つ形で表現される。起源は不明であったが,近年北シリアのラス・シャムラの発掘により,アシアニック語系民の最上の神であることがわかった。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アダド」の意味・わかりやすい解説

アダド
あだど
Adad

メソポタミア神話の天候神。暴風、雷、雨のほか洪水や戦いの神でもあった。本来は東地中海岸地方に住んでいた西セム人の神で、カナンハダドとよばれていたが、アッカドのランマヌ神とも同一視され、『旧約聖書』ではハダデ・リンモンとよばれている(「ゼカリヤ書」12.11)。ヒッタイトではテシュブとよばれ、しばしば石碑にその姿が表された。メソポタミアの各地に、この神に捧(ささ)げられた神殿が建てられた。

矢島文夫

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android