日本大百科全書(ニッポニカ) 「アデノウイルス感染症」の意味・わかりやすい解説
アデノウイルス感染症
あでのういるすかんせんしょう
呼吸器、目、消化器などにみられるアデノウイルスの感染によっておこる疾患の総称。アデノウイルスは49の型(分類の方法によっては51)が知られているが、その約3分の2に病原性が認められ、同一の疾患をいくつかの異なった型のアデノウイルスがおこすこともあれば、一つの型のアデノウイルスがいくつかの異なった疾患をおこすこともある。代表的なものは8型などによる流行性角結膜炎、3型や7型などによる咽頭(いんとう)結膜熱などであるが、そのほか咽頭炎、急性呼吸器疾患、肺炎、消化器疾患、膀胱(ぼうこう)炎、突発性発疹(はっしん)様疾患、髄膜炎、脳炎などもアデノウイルスによっておこることがある。診断は咽頭結膜炎や流行性角結膜炎では特徴的な症状や流行状況から臨床的に診断も可能であるが、その他のアデノウイルス感染症は臨床的に病原を推測することは困難で、確実な診断は患部からのウイルスの分離・同定と血清学的な検査(急性期および回復期の血清について補体結合反応や中和試験など)によって確定する。このウイルスはおもに目、呼吸器、消化器などで増殖し、咽頭結膜熱では水泳プールの水が媒介となって流行をおこしたり、流行性角結膜炎では眼科的な診察や処置による感染が注目されるが、咳(せき)やくしゃみによる飛沫(ひまつ)感染や、また糞便(ふんべん)中にも多くのアデノウイルスが検出されるので経口感染も注意を要する。
[柳下徳雄]