アニュス・デイ(読み)あにゅすでい(英語表記)Agnus Dei ラテン語

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アニュス・デイ」の意味・わかりやすい解説

アニュス・デイ
Agnus Dei

(1) アグヌス・デイ,神羔誦 (しんこうしょう) ともいう。ローマ・カトリック,ギリシア正教,ルター派教会,聖公会などのミサや聖餐式の典礼文,式文中の一句。神の小羊の意味のラテン語。『ヨハネによる福音書』1章 29を典拠とする。ラテン語ミサでパンを裂くときに付唱された。司祭のパックス・ドミニ Pax Dominiに対する応答のあとに続いて単調に唱えられ,さらに司祭が聖体拝受をする前に3つの聖餐式の祈願を朗詠するのに合せて3度詠唱された。最後には dona nobis pacem (われらに平安を与えたまえ) と唱える。司教式目によれば,教皇セルギウス1世が Agnus Dei,qui tollis peccata mundi,miserere nobis (世の罪を除きたまう神の羔,われらを哀れみたまえ) を唱えることを指示し,初めて導入したということになっているが,初期ローマ典礼文中の種々の聖歌を形式的にまとめたにすぎないともいわれる。セルギウス1世の頃まではローマ教会の聖体分割式は無言で行われ,8世紀後半までには聖職者の役目として考えられていたようである。9世紀には多種な分割式が整理されて,祈願は次第に神聖な数である3つに絞られた。現在ローマ・カトリック教会では典礼改革に伴い各国国語で唱えるようになった。 (2) 神の小羊,キリストの象徴。初期キリスト教美術で,カタコンベの壁画そのほかに描かれる。中世末には,この図像を描いたファン・アイクのガン祭壇画がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アニュス・デイ」の意味・わかりやすい解説

アニュス・デイ
あにゅすでい
Agnus Dei ラテン語

ミサ典礼における聖歌の一つで、「神の小羊」の意。また、五つの通常文聖歌からなる多声ミサ曲の最終章をいう。レクイエム一章としても用いられるが、その場合には歌詞一部が異なる。

[今谷和徳]

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