改訂新版 世界大百科事典 「アマチュア演劇」の意味・わかりやすい解説
アマチュア演劇 (アマチュアえんげき)
広くは,職業的な劇団に対して非専門家による演劇活動をさす。日本においては,古くから市井にあった〈素人芝居〉のほか,大正末期から非専門のプロレタリア演劇,農民・学生演劇などが新劇運動の波とともに散発的ではあったが行われていた。第2次大戦後は民主化の中で地域,職場,学校を中心に,市民サークルによる演劇,青年演劇,勤労者の自立演劇(職場演劇),学生演劇,高校演劇など,各分野でのアマチュア演劇運動が急速に広がった。それは市民,勤労者,若者の自主性,創意性,文化性を重んじ,演劇に参加することが社会的行為であると自覚されたところに意義があった。これらの活動は断続的に現代に継承されているが,経営の困難さ,アマチュア性確立の不徹底などのため座の消長はめまぐるしい。その中でも長期に組織的に継続しているのは青年演劇である。1952年以来毎年全国大会が実施され,都道府県で選ばれた地域の青年団が参加している。61年に設立された日本アマチュア演劇連盟も,例年全国のアマチュア劇団を対象に研究大会を催しているが,72年以降は高校演劇もこれに参加している。高校はこのほか,独自に地区や全国での大会を開催している。
外国のアマチュア演劇運動の代表的なものにアメリカのコミュニティ・シアターcommunity theatreがあり,日本にも〈市民劇場〉〈公共劇場〉として紹介されている。これは1910年代以降,〈市民のための市民の劇場〉として発展し,現在人口1万5000人以上の市町村に1劇場という普及を示している。会員組織で民主的に運営され,その創造活動もすべて市民の手によって行われている。ヨーロッパでは,国によってその成立や歴史は違うが,職業劇団に対して自信と誇りを持ってアマチュア演劇を確立しており,50年,100年の歴史を持つ劇団も少なくない。東欧諸国では,そのほとんどが国や自治体の援助を得ている。なお,アマチュア演劇の国際機関としては,1952年に発足した〈国際アマチュア演劇連盟〉(IATA)がある。コペンハーゲンに本部をおき,約40ヵ国が参加,日本も67年に加盟した。
→学生演劇 →職場演劇
執筆者:栗原 一登
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報