改訂新版 世界大百科事典 「アララク」の意味・わかりやすい解説
アララク
Alalakh
トルコ共和国南東部の古代都市名。アララフともいう。現在の遺跡名はテル・アッチャナTell Atchana。アレッポと地中海を結ぶ街道に沿い,アンティオキア北東方,オロンテス川にのぞむ。1937-39,46-49年にウーリーが青銅器時代都市遺跡を発掘し,多数の楔形文字粘土板文書を出土させた。遺構は17層からなり,前3200年ころ居住が開始され,前2100年以後大都市となったことがわかる。前19世紀には大宮殿が出現したが,ハンムラピ時代にはアレッポを首都とするヤムハド王国の一中心地として栄え,ヤリムリムという支配者の宮殿があった(第7層)。それは後のシリア式宮殿建築(ビト・ヒラニ式)の原型とされる。次に有名なのは,イドリミ王(ミタンニ時代,在位,前1480-前1450ころ)の城塞つき大宮殿や神殿(第4層)である。この王の碑文付座像が残っている。アララクは前1200年ころ海の民の侵入によって破壊された。粘土板文書は青銅器時代北シリアの制度や経済に関する重要な史料である。
執筆者:小川 英雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報