アリガタバチ(英語表記)bethylid wasp

改訂新版 世界大百科事典 「アリガタバチ」の意味・わかりやすい解説

アリガタバチ (蟻形蜂)
bethylid wasp

膜翅目アリガタバチ科Bethylidaeに属する外部捕食寄生性のハチ総称体長数mm,体は細長く一般に青銅光沢があり,雌に無翅のものが多いが両性ともに無翅のこともある。小型のため分類学的・生態学的研究は遅れている。ほぼ全世界に分布し,とくに熱帯と亜熱帯に多い。小型の甲虫幼虫,巻葉やつづり葉の中に潜むガの幼虫をとる。みずから巣をつくることはない。日本にすむキアシアリガタバチLaelius microneurusは,毛織物昆虫標本の害虫であるヒメマルカツオブシムシの幼虫に寄生する。雌は寄主を刺して永久麻痺させ,適当な隙間に引きずり込む。それから寄主の腹部の腹側の剛毛を大あごで引き抜き,数個の卵を毛を抜いたあとの滑らかな表面に縦に産みつける。ハマキアリガタバチGoniozus japonicusは,ハマキガなど小ガ類の幼虫を寄主とし,本州中部では年6世代を繰り返す。成虫は植物の茎の中で越冬する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アリガタバチ」の意味・わかりやすい解説

アリガタバチ
ありがたばち / 蟻形蜂
betylid-wasps

昆虫綱膜翅(まくし)目アリガタバチ科Betylidaeの総称。世界に約300種が知られ、日本では10種余りが記録されている。ほとんどが体長5ミリメートル以下の小さいハチで、ほかの昆虫の幼虫に寄生する。種によっては雌は無翅で、一見アリに似ている。ハマキアリガタバチは、葉を巻いてその中に潜む鱗翅(りんし)類の幼虫に産卵する天敵として有力なものである。日本の屋内で発見されるアリガタバチ類は、ノコギリヒラタムシに寄生するノコギリヒラタアリガタバチ、ヒメマルカツオブシムシに寄生するキアシアリガタバチ、おもに木材穿孔(せんこう)性の甲虫類の幼虫に寄生するクロアリガタバチ、主としてタバコシバンムシに寄生するシバンムシアリガタバチの4種が知られており、後二者の雌は無翅で、人を刺すことがあり、近年、屋内害虫として問題となっている。

[奥谷禎一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アリガタバチ」の意味・わかりやすい解説

アリガタバチ
Bethylidae

膜翅目アリガタバチ科の昆虫の総称。一般に体長 10mm以下の細長いハチで,雌は無翅のものが多く,一見アリに似るためその名がある。雄は有翅。鞘翅類 (甲虫類) や鱗翅類の幼虫に寄生する。刺されると非常に痛い。クロアリガタバチ Sclerodermus japonicusは,枯材などにつくシバンムシの幼虫に寄生するため,屋内で多数発生して人体に害を与えた例がある。カマバチ科 Dryinidaeは近縁とされるが,雌の前肢が鋏状に変形している。ウンカ,ヨコバイなどに寄生する。

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百科事典マイペディア 「アリガタバチ」の意味・わかりやすい解説

アリガタバチ

膜翅(まくし)目アリガタバチ科の総称。小型で,黒または茶色,雌は翅を欠き一見アリに似るが産卵管毒針となる。幼虫は他の昆虫類,特に甲虫の幼虫に寄生するものが多い。木材の害虫の天敵となる種類もある。

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