改訂新版 世界大百科事典 「アリガタバチ」の意味・わかりやすい解説
アリガタバチ (蟻形蜂)
bethylid wasp
膜翅目アリガタバチ科Bethylidaeに属する外部捕食寄生性のハチの総称。体長数mm,体は細長く一般に青銅光沢があり,雌に無翅のものが多いが両性ともに無翅のこともある。小型のため分類学的・生態学的研究は遅れている。ほぼ全世界に分布し,とくに熱帯と亜熱帯に多い。小型の甲虫の幼虫,巻葉やつづり葉の中に潜むガの幼虫をとる。みずから巣をつくることはない。日本にすむキアシアリガタバチLaelius microneurusは,毛織物や昆虫標本の害虫であるヒメマルカツオブシムシの幼虫に寄生する。雌は寄主を刺して永久麻痺させ,適当な隙間に引きずり込む。それから寄主の腹部の腹側の剛毛を大あごで引き抜き,数個の卵を毛を抜いたあとの滑らかな表面に縦に産みつける。ハマキアリガタバチGoniozus japonicusは,ハマキガなど小ガ類の幼虫を寄主とし,本州中部では年6世代を繰り返す。成虫は植物の茎の中で越冬する。
執筆者:山根 爽一
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