日本大百科全書(ニッポニカ) 「アワヨトウ」の意味・わかりやすい解説
アワヨトウ
あわよとう / 粟夜盗
Oriental armyworm moth
[学] Pseudaletia separata
昆虫綱鱗翅(りんし)目ヤガ科に属するガ。はねの開張は40ミリメートル内外で、前翅は黄褐色を帯びる。全世界に多数の種を含むキヨトウ(黄夜盗)群の1種。ヨーロッパと北アメリカに産する近縁種armyworm moth/P. unipunctaとともに、イネ、アワ、ムギ、トウモロコシなど各種の農作物の著名な害虫として知られている。本種はアジア一帯のほか、オーストラリア、ニュージーランドにわたって分布する。最近ではむしろ造成牧草地などの被害が注目されている。本種については、中国で行われた広範な成虫個体群の移動に関する研究がよく知られ、1~2月に中国南部で羽化したガは北方に向かい、途中各地で繁殖を続けて中国東北部に達し、秋にはふたたび南下し、この間、計5世代を経るという。この調査ではマーキング法による再捕獲実験も行われた。日本でもこの余波を受けて年々大陸からの進入があり、一定の気象条件のもとで着地したとき大発生が生じ、東北地方の牧草地にその被害例が多い。
[杉 繁郎]