日本大百科全書(ニッポニカ) 「アンチェスキ」の意味・わかりやすい解説
アンチェスキ
あんちぇすき
Luciano Anceschi
(1911―1995)
イタリアの評論家、美学者。バンフィAntonio Banfi(1886―1957)の弟子で、行動的な師の哲学・思想を受け継ぎ、ファシズム体制下にありながら、文化の自律を唱えた。抵抗の詩人クアジーモド(1959年ノーベル文学賞受賞)の『ギリシア叙情詩集』(1940)に犀利(さいり)な論考を序文として付したことでも名高い。20世紀エルメティズモ詩学の基礎を築いて『新しい叙情詩』(1943)のうちに具体的な資料としての詩選集を編んだ。ボローニャ大学教授として長年、美学を講じ、処女論文集『芸術の自律性と他律性』(1936)以後、『バロック論その他』(1953)、『美学論考ベーコンからカントへ』(1972)など、多数の哲学・美学論文集を著わした。1960年代からは、関心の的を詩学に絞り、文芸誌『イル・ベッリ』(1956~1974)を主宰して、新しい詩法と前衛文学に深い理解を示しながら、新前衛派(63年グループ)の若い詩人や作家たちの導き手になった。他方で、評論家アントニエッリSergio Antonielli(1920―1982)とともに編んだ詩選集『1900年代の叙情詩』(1953)は、20世紀前半におけるイタリアの詩人群を的確に詩壇に位置づけてみせた。新版『1900年代イタリアの詩学』(1990)は、彼の詩論の集大成である。
[河島英昭]