〈詩〉あるいは〈詩〉の創作にかかわる研究・分析・論考をさす言葉。ただしここでいうところの〈詩〉とは,狭い意味でのいわゆる詩ばかりではなく(このような比較的狭い範囲のものを扱う場合には,〈詩法〉〈詩論〉の用語もしばしば用いられる),文学一般,さらにロシア・フォルマリズムの登場以後の現代においては,まったく違う視座から,芸術全般,文化全般をも含むものとなっている。そのような意味での今日における詩学とは,文化の,あるいは文化の創生にかかわる構造,あるいは〈内在的論理〉とでもいうべきものの解明の学になっているといってもよかろう。
ヨーロッパにはアリストテレス以来の詩学,文学上の創作論の伝統があったが,20世紀初めのロシアにおいて,直接的・具体的な影響関係はもたずに,文学作品を一つの言語世界としてとらえ,その言語(表現)のさまざまなレベルでの〈手法〉と構造の統合的研究から作品を解明しようとする,フォルマリストたちの新しい視座からの〈詩的言語〉あるいは言語の〈詩的機能〉の研究が興った。
執筆者:編集部
今日,一つの著作として伝わるアリストテレスの《詩学》(原題はperi poiētikēs(詩について))は,当時アリストテレスがギリシア悲劇(具体的には《オイディプス王》など)やギリシア叙事詩(具体的には《イーリアス》《オデュッセイア》など)を念頭において,一種の文学論あるいは創作論を学徒らに講義していたものが,その講義の覚書,あるいは聴講者の筆注が残り,26章からなる一つの著作物となったものといわれる。内容的には,芸術の起源は人間の模倣本能だとするミメーシスの説や,有名なカタルシス(浄化)の論なども含まれる悲劇論,叙事詩論などであるが,なかでもその中心は悲劇論であった。このように《詩学》は,その扱う対象が韻文(劇詩と詩)に限られていたが,〈小説〉という文学ジャンルが成立していなかった時代ゆえ,それは言いかえれば当時の〈文学〉の全領域を扱っていたということもできる。このアリストテレス詩学は,以降,ローマのホラティウスの《詩法Arspoetica》などとともに,文学に関する省察の基本として,修辞学(レトリック)とともに長くヨーロッパ世界において行われることとなった。
詩学は初めアリストテレス詩学(とくにカタルシスを中心とする悲劇論)に対する注釈を中心として展開した。しかしルネサンス期になって,イタリアのカステルベトロら,さまざまな注釈を通じてではあるものの,それを当時の文学状況に合わせて文学理論を作りあげる者もあらわれるようになった。なかでも17世紀のフランスにおいては,アリストテレスの《詩学》の読み直しによる古典主義文学理論がドービニャック師らにより作りあげられ,同時代にJ.ラシーヌ,P.コルネイユらの劇作家が数多くの傑作悲劇を残した。ただし,この古典主義理論に体系的な理論書はあまりなく,J.シャプラン,N.ラパンら古典主義の理論家たちはおりに触れての省察という形で発言しているにすぎない。それを韻文で俗耳に入りやすく,啓蒙的な詩論書にしたのがN.ボアローの《詩法Art poétique》であった。これは〈理性と真実らしさ〉の論を中核とし,一般的に受容されていたものを歯切れよく述べたものにすぎなかったが,18世紀以降古典主義の教本として,ドイツやイギリスの文学(ポープら)に影響を与えた。
18世紀のロマン主義文芸運動以降は,しだいに新しい創作論や近代的な文芸批評が起こり,直接的にアリストテレスに拠る詩学は衰えたものの,言うまでもなく,今日の文学・芸術を考える上で,アリストテレスの《詩学》自体に含まれていたさまざまな論は,その価値を失っていない。
執筆者:福井 芳男
〈詩学〉という言葉は,一般には詩の韻律・言語の分析や研究をいうが,構造主義の登場以後はとくにロシア・フォルマリズムに始まる詩,そして一般に文学テキストの構造的研究とその理論をさす。ロシア・フォルマリズム(1910年代後半に発足)は,世界の明視(ビジョン)の創造を芸術の目的とし,その方法は異化(V.シクロフスキーによる。ロシア語ではオストラネーニエostranenie)であるとした。これにより,詩的言語は自動化し無意識化した日常生活を支える日常言語を打破して世界の明視を回復する。作品は〈手法〉の総計に帰せられ,〈何を〉ではなく,〈いかに〉が重視された。言葉(フォルム)は見慣れたものとなるとともに感じられなくなり世界も見えなくなる。そこで言葉を意外な文脈においたり新造語によって見慣れぬものにし,読者の知覚を覚醒させて世界が見えるようにするのである。このように芸術一般の原理である新奇・意外性の原理が追求され,リズム論,物語のプロット論,文学発展史など,文学・芸術現象すべてに一貫して適用された。この原理は文芸学者で作家のYu.N.トゥイニャーノフにより〈規範からの逸脱〉として定式化され,文学発展の動態を規範化=忘却=活性化としてとらえる見通しが開かれていった。
日常言語が何かを伝達するのに対し,詩の言語は言語そのものを志向するという詩的機能の考えは芸術作品の自立の一般原理だが,これも言語学者R.ヤコブソンによって定式化された。彼は散文がメトニミー(接近連合)を,詩がメタファー(類似連合)を志向することを明らかにし,さらに両者が言語の二大原理をなし,文化のタイプにも関係あることを解明した。そのほか,S.エイゼンシテインはモンタージュ論により映画の詩学の道を切り開き,V.Ya.プロップは魔法昔話の一般構造式を定式化している。
M.M.バフチンはフォルマリズムのように異化の手法を絶対視せず,共創造・再創造の理論を提起した。彼は作品を形式的構造に還元せずに作者・主人公・読者の参加のもとに成立すると考えた。美的コミュニケーションとしての小説は伝統と同時代の諸社会的・美的コミュニケーション(生活の言葉と他のもろもろの小説の言葉など)から織り上げられる。詩の言葉がモノローグ的であるのに対し小説の言葉は本来的に対話的で,その起源には言葉を呪縛から解放し自由にするパロディ精神がある。その対話的な言葉は対象のみでなく他者をも志向し,〈他者の言葉〉に浸透されている。小説の言葉は〈もの〉ではなく,思想=意識=声なのであって,対話は単に言葉のやりとり,相互浸透ではなく,小説の対話的な言葉の源泉にはカーニバル的世界観があるとした。無礼講的祝祭カーニバルでは聖俗,貴賤,死生等の対立が一挙に止揚され,抑圧された人間性が解放される。人間に本来的なものであるこのカーニバル精神はカーニバルの消滅とともに小説の言葉のなかに入り込むが,主人公たちの声が溶けあわぬポリフォニーを形成するドストエフスキーの小説はその典型であった。テキストを生成として考え,同時的連関と歴史的発展の見通しにおいてとらえようとするバフチンのテキスト理論は,フォルマリズムのそれとともに現代詩学の基本概念を提供した。それらは引用,コラージュ,視点,声など多方面にわたり,その適用範囲は詩,散文のみならずレトリック,芸術,文化一般に及ぶものであった。
フォルマリズムの仕事は1920年代後半にはプラハ言語学派に受けつがれ,ここで構造詩学の展望が示された。芸術家の手法としての異化の概念は,ここで活性化(アクトゥアリザシオンactualisation)の概念に読みかえられる。日常言語が自動化を志向する(それとして意識されないで用いられるようになる)のに対し,詩的言語はその自立的価値のために活性化を志向する。この活性化は,規範からの逸脱と関係があり,文学史におけるあらゆるテキスト,同時代の文学のあらゆるテキストとの相関において決定されるのである。この新しい枠組みの中で,ヤコブソンの詩的機能は言語学者・美学者ヤン・ムカジョフスキーJan Mukařovský(1891-1975)の〈美的機能〉に発展し,発話の機能モデルが検討され,民俗学者・記号論学者のP.ボガトゥイリョフは民衆芸術(民衆演劇,民俗衣装)の機能構造的研究を残した。
ナチス侵攻を前にしてヨーロッパから北アメリカに脱したヤコブソンは,第2次大戦後,情報理論やパース記号論の諸概念を導入して構造詩学の定式化を行う。《言語学と詩学》(1960)がそれで,この論文は戦後の構造詩学の出発点となったし,レビ・ストロースとの共同研究《ボードレールの〈猫〉》の構造分析は〈無意識的なものの意識化〉を目ざす構造主義の詩学の範となった。これより先,レビ・ストロースはプロップの《魔法昔話の形態論》やフォルマリズム詩学,プラハ言語学派の機能構造言語学の成果を踏まえてオイディプス神話の分析を行っているが,これはのちのC.ブレモン,A.グレマス,R.バルト,Ts.トドロフ,A.ダンダスらの物語構造論を生み出す端緒となった。
構造主義による文化の構造分析は文化批判を含むが,バルトの《零(ゼロ)度のエクリチュール》は時代の文体ともいうべきエクリチュールを批判的に分析し,《神話作用》も現代ヨーロッパ社会におけるブルジョア神話の〈自然さ〉〈もっともらしさ〉を打破,非神話化する企てであり,詩学が広く現代文化をもその射程におさめうることを示した。初期の構造分析はフォルマリズムの影響が強く,解釈学のP.リクールもその形式主義を批判して〈生きられたテキスト,言語〉を強調したが,しだいに関心は構造分析から〈構造化〉,テキスト分析へと移っていった。バルトの《S/Z》ではテキストの構造と現実の構造との動態的相関が分析されている。〈構造化〉への関心を推し進めたのは,ブルガリアに生まれフランスで活躍するJ.クリステバで,彼女は何よりもバフチンの美学を中心にフロイト,ラカンの思想やF.deソシュールのアナグラム研究にもとづいて詩的言語理論を展開した。彼女はテキスト(言語)が諸テキスト(諸言語)から生み出されるというバフチンの考えをテキスト相互連関性の概念で再定式化し,シニフィアンス(意味形成あるいは意味生成)の過程を重視した。人間の意識は法,言語が支配する〈象徴界〉と無意識的な〈記号界〉からなるが,詩的言語のリズムは表層言語を解体することにより主体を象徴界から記号界に導き,あるいは記号界を象徴界に流入させ,こうして主体を文化の法や言語から解放するという。
ロシア・フォルマリズムの発祥地ソ連ではスターリンの死後,構造言語学が発足し,ついでモスクワ・タルトゥ学派を中心に文化記号論が発足した。この文化記号論の核として構造詩学を展開したのはYu.M.ロートマンで(《構造詩学講義》《芸術テキストの構造》ほか),彼は構造言語学,情報理論,情報美学,一般記号論の諸概念によるロシア・フォルマリズムとバフチンの諸成果の読み直しを行った。日常言語も世界のモデルだが,その上に築かれる芸術言語は,より全体的で濃密な世界のモデルをなす第2次モデル形成体系である。この第2次モデル形成体系こそ文化記号論の研究対象たる文化テキストであり,彼は文化テキストとしての芸術テキストの構造の解明とともにさまざまな文化テキストのタイポロジー研究を行い,さらに文化テキストの総体としての文化の惰性化と活性化のメカニズムを明らかにした。
詩学はかつて構造言語学を生み出したが,現在でもそれは文化記号論の核であり,単なる詩,文学テキストの研究を超えて〈文化の詩学〉となっている。
→記号
執筆者:磯谷 孝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
古代ギリシアの哲学者アリストテレスの著作。原題はPeri poiētikēsといい、「創作(詩作)について」という意味である。日本では詩学という訳語が一般化しているが、適訳とはいえない。アリストテレスの他の作品と同様、本書も公刊を目的とした著者自身の著述ではなく、講義草案あるいは聴講者の筆記ノートのたぐいらしく、叙述に一貫性を欠き、文体も粗雑であるため、しばしば真意を把握しがたい。所論のもっとも重要な箇所の多くについて、諸説の分かれるのも、主としてそのためである。現在のテキストは26章からなるが、その大部分を悲劇論が占める。悲劇論に続いて喜劇を論ずる第二部があったことは確実であるが、これは失われた。アリストテレスは悲劇(あるいは演劇)を文学の最高形式と考えていたので、その創作論が実質的に演劇論になるのは当然であった。
芸術活動一般が人間の模倣本能に根ざすという、有名な模倣説(ミメーシス)から論述が展開される。模倣の手段・対象・仕方によって芸術のジャンルが分かれることを説き、それに従って演劇の定義が与えられ、続いて悲劇と喜劇の区別とそれぞれの起源が語られる。第6章に至り既述の内容を整理して、悲劇の定義が述べられるが、有名な浄化説(カタルシス)はこの定義の一部をなす。悲劇は観衆の心におそれとあわれみの感情を誘発し、それによって同種の感情を浄化する効果をもつ、と普通は解される章句であるが、その真意については古来論議が絶えない。次に悲劇の構成要素として物語(筋)、性格、文体、思想、視覚的効果、作曲の六つをあげ、それぞれについて実例をあげて論述し、著者の抱く悲劇の理想像を描いてみせる。20~22の3章は文体に関するもので、ほとんど文法論ないし文体論的な内容のもの。23章以下終章までは主として叙事詩および叙事詩と悲劇との比較が論じられるが、すべて悲劇を文学の最高形式とする著者の立場に基づいている。
本書が古代においてはほとんど顧みられなかったことも奇怪であるが、ルネサンス以後の信仰的傾向もやや異常であった。とまれ近世から現在にかけて、文学理論の古典としての本書の地位は不動である。
[松平千秋]
『藤沢令夫訳『詩学』(『世界古典文学全集16 アリストテレス』所収・1966・筑摩書房)』▽『今道友信訳『詩学』(『アリストテレス全集 第17巻』所収・1972・岩波書店)』▽『松本仁助・岡道男訳『詩学』(1985・世界思想社)』
詩の本質や構成についての批評理論をいう。「わび」とか「さび」といった東洋の直観的で寡黙な批評態度に比べて、西洋ではアリストテレスの『詩学』(前4世紀)以来、つねに分析的・論理的態度をとってきた。プラトンが『共和国』で詩を単なる模倣にすぎないとして倫理的に低いものと攻撃したのに対して、アリストテレスは悲劇を例にとって、それは一つの「完結した人間的行為の模倣」であり、また「憐憫(れんびん)と恐怖を引き起こして、観客の感情を浄化する」のに役だつと、心理主義的な詩論を展開した。彼以降は、ホラティウスの『詩論』(前1世紀)がボアローの『詩法』(1674)に影響を与えて、フランス古典主義の基礎をつくった。19世紀にはドイツのロマン主義の詩論家A・W・シュレーゲルやヘーゲルが、古典主義の模倣説を否定して詩的想像力の自律性と認識的能力を力説し、イギリスのコールリッジの『文学的自伝』(1817)に受け継がれた。19世紀後半には、アメリカのポーが『詩の原理』(1849)において叙事詩や教訓詩などを否定して純粋詩論を唱導し、フランスのボードレール、マラルメ、バレリーらの象徴派詩人に大きな感化を与えた。
日本では萩原朔太郎(はぎわらさくたろう)の『詩の原理』(1928)がポーの純粋詩論を受け継いでおり、また西脇(にしわき)順三郎の『超現実主義詩論』(1929)も、ポーとボードレールのイロニー説を踏まえた画期的な詩論であり、晩年には『詩学』(1968)を書いている。
[新倉俊一]
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… このような二分法は,実は古代ギリシアにも存在したので,すでに触れたディテュランボスは,ディオニュソスへの讃歌をオルケストラにおいて円形に舞われる舞歌によって表すものであり(他のジャンルではコロスは四角に展開した),仮面も衣装もつけず,役を演ずるのでもなかったから,この点で,代行型演戯である悲劇,サテュロス劇,喜劇とは対比されていた。しかし作品としては悲劇と喜劇のうちの傑作とされたものの一部が残り,アリストテレスの《詩学》も悲劇論が演劇論として残ったために,西洋世界では代行型演戯のみを演劇と見なす伝統が根強く,物語性のない踊りや純粋にショー的演戯はその視野に入ってこないことが多かった。しかし20世紀に入ってからの,特に1960年代以降の演劇の再検討と変革の中では,〈他者の視線を前に演戯する人間〉そのものが実践と反省の両面で思考の対象とならざるをえなかった。…
…いいかえれば,流れている現実の行動をひとつの単位として切り取り,それを始めと終りのある統一体として展望するとはどういうことか,ということであるが,これは演劇の文学性,あるいは戯曲の本質を考えるうえで決定的な問題だといえる。周知のように,アリストテレスは《詩学》のなかで演劇を〈一定の長さを持ち,必然的な始めと中と終りを持って完結した行動の再現〉と定義し,この点に演劇が歴史と区別されるひとつの重要な特性がある,と考えた。こうした自己完結した行動は,もちろん,現実のなかにそのままのかたちでは存在しないから,何らかの特別の力がそれを現実の外に創造するのだ,と考えなければならない。…
…ただしここでいうところの〈詩〉とは,狭い意味でのいわゆる詩ばかりではなく(このような比較的狭い範囲のものを扱う場合には,〈詩法〉〈詩論〉の用語もしばしば用いられる),文学一般,さらにロシア・フォルマリズムの登場以後の現代においては,まったく違う視座から,芸術全般,文化全般をも含むものとなっている。そのような意味での今日における詩学とは,文化の,あるいは文化の創生にかかわる構造,あるいは〈内在的論理〉とでもいうべきものの解明の学になっているといってもよかろう。 ヨーロッパにはアリストテレス以来の詩学,あるいは文学上の創作論の伝統があったが,20世紀初めのロシアにおいて,それとは直接的・具体的な影響関係はもたずに,まず文学作品を一つの言語世界としてとらえ,その言語(表現)のさまざまなレベルでの〈手法〉と構造の統合的研究から作品を解明しようとする,フォルマリストたちのまったく新しい視座からの〈詩的言語〉あるいは言語の〈詩的機能〉の研究が興った。…
…広くは演劇観一般を意味し,狭くは具体的な劇作法・劇作術をさす言葉であるが,これが一つの術語として確立していることが,演劇という芸術の本質的な一面を暗示しているといえる。現代語には文学観の全体を示す〈詩学poetics,Poetik(ドイツ語)〉という言葉はあるが,個々のジャンルについて,たとえば抒情詩観を一語で表す成語はないし,小説作法を意味する単独の術語もないからである。古来,演劇はとくにその方法論について意識的な芸術であり,その伝統が,近代のドイツにいたってこの独特の術語を生んだと考えられる。…
…それは近代以後の散文劇とはまったく異質の,非日常的劇形式だったのである。 これらの悲劇を具体的に論じたアリストテレスの《詩学》は,世界最初の悲劇論であり,またその後の悲劇観に決定的な影響を及ぼした著作である。この中で著者は,悲劇とは厳粛で,ある大きさをもった一つの完結した行動を模倣するもので,憐憫(れんびん)と恐怖という感情を起こす事件を含み,この事件を通じてこれらの感情の浄化(カタルシス)を達成するという趣旨のことを述べている。…
※「詩学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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