アンティゴネ(英語表記)Antigonē

デジタル大辞泉 「アンティゴネ」の意味・読み・例文・類語

アンティゴネ(Antigonē)

ギリシャ神話で、テーベオイディプスの娘。盲目の父に従い各地放浪、のちテーベに戻り、叔父クレオン王の命にそむいて反逆者として戦死した兄を葬ったため、洞窟どうくつに閉じ込められて自殺した。ソフォクレス作の同名悲劇で知られる。アンチゴーネ。

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精選版 日本国語大辞典 「アンティゴネ」の意味・読み・例文・類語

アンティゴネ

  1. ( Antigone )[ 異表記 ] アンチゴーネ
  2. [ 一 ] ギリシア神話のテーベの王オイディプスの娘。盲目となった父に従い各地を放浪。テーベに帰り、国法を犯して兄の遺体を葬ったために生き埋めにされた。
  3. [ 二 ] ギリシア悲劇。ソフォクレス作。前四四二~前四四一年に初演。アンティゴネの悲劇的な生涯を描く。
  4. [ 三 ] [ 異表記 ] アンチゴーヌ 戯曲一幕アヌイ作。一九四二年発表。ドイツ占領下のパリで上演。抵抗派の精神を劇化したもの。

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改訂新版 世界大百科事典 「アンティゴネ」の意味・わかりやすい解説

アンティゴネ
Antigonē

ギリシアの三大悲劇詩人の一人ソフォクレスの代表作(前442か441)。同じ作者の《オイディプス王》《コロノスのオイディプス》に続く内容を持つ。オイディプスの息子たちエテオクレスEteoklēsとポリュネイケスPolyneikēsは王位を争い,国を追われたポリュネイケスはアルゴス軍とともに祖国を攻め,兄弟は相討ちの死を遂げる。新国王クレオンKreōnは国に敵した死者の埋葬を禁ずるが,アンティゴネは国法よりも神々の掟を守り,兄弟への愛から王命に背き,地下牢に投ぜられて縊死(いし)する。新たに得たばかりの権威を守ろうとする王の頑迷と遅すぎる分別は,王子ハイモンHaimōnと王妃の死をも招く。この劇の好評は前440年に作者がサモス遠征の将軍に選ばれたことに寄与したといわれ,これが作品の年代決定の手がかりとなっている。ヘーゲルはこの劇を国家と家の対立と解釈し論争を呼んだ。翻案にはアヌイの《アンティゴーヌ》(1944),ブレヒトの《アンティゴネ》(1948-49)がある。
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アンティゴネ
Antigonē

ギリシア伝説で,テーバイ王オイディプスとその母イオカステIokastēとの娘。オイディプスがみずから盲目となって国を出たとき,彼女は父の手を引いて放浪の旅につき従い,彼がアテナイ近郊のコロノスで世を去るまで,孝養をつくした。その後,彼女は故国に帰ったが,王位をめぐる争いで2人の兄ポリュネイケスPolyneikēsとエテオクレスEteoklēsがともに戦死したとき,新しく王位についた叔父のクレオンは,アルゴスの七将とともにテーバイに攻め寄せたポリュネイケスを反逆者ときめつけ,その埋葬を禁じた。しかし彼女は禁を犯して長兄の葬礼を行ったため,捕らえられて地下の墓場に生きながら葬られ,みずから縊死(いし)した。この話はソフォクレスの2編の悲劇《コロノスのオイディプス》と《アンティゴネ》で有名であるが,新しくは,コクトーによるオペラ《アンティゴーヌ》の台本(オネゲル作曲,1927初演)や,ジャン・アヌイの悲劇《アンティゴーヌ》(1944初演)でも取り扱われている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アンティゴネ」の意味・わかりやすい解説

アンティゴネ(ソフォクレスの悲劇)
あんてぃごね
Antigonē

古代ギリシアの大悲劇詩人ソフォクレスの悲劇。紀元前442年ごろの上演と伝えられる。テーベの王女アンティゴネの2人の兄が支配権を争い、負けて追放されたポリネイケスは、他国の軍隊を率いて祖国に攻め入り、討ち死にする。新王クレオンは祖国の反逆者ポリネイケスの死体の埋葬を禁じると布告する。この禁令を無視して死を賭(と)しても兄を埋葬して血族としての義務を果たすというアンティゴネの決意から劇が展開する。埋葬の事実が発覚したのち、王の叱責(しっせき)に対して、アンティゴネは、死者の埋葬は「文字として書かれていないが神々の永遠の法」であると主張して揺るがない。この論争と対決のなかに、ソフォクレスに固有な英雄的形姿、高貴な精神と強固な意志が顕現する。怒った王により幽閉された石牢(いしろう)の中で、彼女は屈辱の生よりも美しい死を選ぶ。彼女の死が婚約者である王子ハイモンの自殺を、さらにそれを悲しんだ王妃の自殺を引き起こし、死者の世界まで支配しようとしたクレオンは天涯孤独の身となって残される。

[竹部琳昌]

『呉茂一他訳『ギリシア悲劇全集 2』(1960・人文書院)』


アンティゴネ(ギリシア神話)
あんてぃごね
Antigonē

ギリシア神話に登場する人物。英雄オイディプスとその母イオカステとの間に生まれた娘。兄はポリネイケスとエテオクレス、妹はイスメネ。ギリシア神話を彩る女性のうちでもっとも気高い性格の主とされている。父オイディプスが自分の罪を恥じて自らの目をえぐり、盲人となって諸国をさまよい、アッティカのコロノスでその一生を終えるまで、彼女は父に付き添った。父の死後、祖国のテバイ(テーベ)に戻って妹といっしょに暮らしていた彼女を新たな不幸がみまう。テーベに攻め寄せたアルゴスの七将を撃退したとき、兄のポリネイケスとエテオクレスは、敵味方に分かれて対立し、決闘で相討ちとなって死んだ。テーベの新たな王となった彼女の伯父クレオンは、祖国の指導者としてエテオクレスの葬儀だけは行ったが、敵方についたポリネイケスのそれは許さなかった。しかしアンティゴネは、肉親の埋葬は神々に課せられた義務と考えて、クレオンの命令に背き、ポリネイケスの遺体に一握りの土を注いで葬礼を行った。この行為は当然クレオンの怒りを招き、死刑を宣告された彼女は、祖先のラブダキデスの墓に生きながら閉じ込められた。アンティゴネはその中で首をくくり、また彼女を助けにきた婚約者ハイモンも彼女の遺体の前で自殺した。さらにクレオンの妻エウリディケは、悲しみのあまり刃(やいば)で胸を貫いた。この話は、悲劇詩人ソフォクレスの『アンティゴネ』において詳しく語られている。

[小川正広]

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百科事典マイペディア 「アンティゴネ」の意味・わかりやすい解説

アンティゴネ

ギリシア伝説のテーバイ王オイディプスの娘。盲目の父王を世話しつつ諸国を放浪する。父の死後,兄ポリュネイケスの死体がさらしものになっているのを叔父クレオンの命に反して埋葬し,捕らえられ自殺する。ソフォクレスに同名の作品があるほか,コクトーのオペラ台本,J.アヌイの戯曲(いずれも《アンティゴーヌ》),G.スタイナーの評論《アンティゴネの変貌》なども有名。
→関連項目テーベ伝説

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世界大百科事典(旧版)内のアンティゴネの言及

【アンティゴネ】より

…ギリシアの三大悲劇詩人の一人ソフォクレスの代表作(前442か441)。同じ作者の《オイディプス王》《コロノスのオイディプス》に続く内容を持つ。オイディプスの息子たちエテオクレスEteoklēsとポリュネイケスPolyneikēsは王位を争い,国を追われたポリュネイケスはアルゴス軍とともに祖国を攻め,兄弟は相討ちの死を遂げる。新国王クレオンKleōnは国に敵した死者の埋葬を禁ずるが,アンティゴネは国法よりも神々の掟を守り,兄弟への愛から王命に背き,地下牢に投ぜられて縊死(いし)する。…

【ソフォクレス】より

… 彼の作品は全部で123編あったと伝えられているが,完全な形で現存しているのは7編の悲劇だけで,そのほかに90余の題名,サテュロス劇《追跡者》の大断片,失われた劇の多数の断片が残されている。7編の現存悲劇を年代順に記せば,《アイアス》,《アンティゴネ》(前441ころ),《トラキスの女たち》,《オイディプス王》(前429ころ‐前425ころ),《エレクトラ》,《フィロクテテス》(前409),《コロノスのオイディプス》(遺作,前401上演)となろう。ソフォクレスは自分の作風の変化について,まずアイスキュロス風の誇大な文体,次に技巧的で生硬な文体を用いた時代を経て,最後に性格描写に適した最良の文体を生み出した,と述べたことが伝承されている(プルタルコス)。…

【アンティゴネ】より

…しかし彼女は禁を犯して長兄の葬礼を行ったため,捕らえられて地下の墓場に生きながら葬られ,みずから縊死(いし)した。この話はソフォクレスの2編の悲劇《コロノスのオイディプス》と《アンティゴネ》で有名であるが,新しくは,コクトーによるオペラ《アンティゴーヌ》の台本(オネゲル作曲,1927初演)や,ジャン・アヌイの悲劇《アンティゴーヌ》(1944初演)でも取り扱われている。【水谷 智洋】。…

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