日本大百科全書(ニッポニカ) 「アンチゴーヌ」の意味・わかりやすい解説
アンチゴーヌ
あんちごーぬ
Antigone
フランスの劇作家ジャン・アヌイの悲劇。1942年刊。1944年、占領下のパリで初演。ギリシアのソフォクレスの悲劇『アンティゴネ』に取材。オイディプスの2人の息子はテーベの王座を争って死ぬ。即位した叔父クレオンはその1人の死体を晒者(さらしもの)にして秩序の掟(おきて)を示すが、兄弟の妹アンチゴーヌはクレオンの息子と愛し合いながらも自分の愛と自由のために国法に反抗し、死体を埋葬しようとする。クレオンは現世の幸福を守るため心ならずも彼女を処刑する。現実との妥協を拒み、純粋な自我を貫く女主人公の姿に不条理の深淵(しんえん)をのぞかせ、アヌイの最高傑作の一つとされる。
[岩瀬 孝]