アンドロノボ文化(読み)アンドロノボぶんか

改訂新版 世界大百科事典 「アンドロノボ文化」の意味・わかりやすい解説

アンドロノボ文化 (アンドロノボぶんか)

S.A.テプロウホフによって1920年代に提唱された青銅器文化。シベリア中南部,アチンスク近くのアンドロノボAndronovo村からその文化名が由来する。カザフスタン,西シベリア,南ウラルの各地方に分布西方においては,東ヨーロッパのスルブナ文化(木槨墳文化)と接触している。しかし,その文化限界については,研究者の間で一致していない。また,その存続時期についても一致した意見がない。一応,前2千年紀中葉そしてその後半と年代づけられている。この文化の遺跡には,竪穴住居址と地上住居址を含む種々の集落址,埋葬遺体をもち,まれに火葬である埋葬墓群,とくに墓の場合は,配石や環状列石をもつ低い墳丘のものがある。副葬品には,石鏃,青銅製品(武器と道具),銅製・粘土製小玉,金製・銅製の漏斗状耳飾があり,土器は,通常平底で,施文された深鉢,方形の皿がある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アンドロノボ文化」の意味・わかりやすい解説

アンドロノボ文化
アンドロノボぶんか
Andronovo culture

アルタイ文化の流れのなかで一時期を占める青銅器時代の文化。 S.テプロウホフによって認められ,その分布範囲は,南シベリアのアルタイ山地,カザフスタン,ミヌシンスク地方に及んでいる。その名称は,アチンスク近くのアンドロノボ村から取られた。墳墓円形の低い墳丘で,ときに石囲いをもち,板石や木で組まれた墓壙 (墓穴) がある。人骨は南西に頭を向け,側臥屈葬で,火葬の場合もある。この文化をもったのは,牧畜と原始農耕を営む父系制社会であった。西方では木槨墳 (スルブナヤ) 文化,北方ではオビ,イルティシ両川下流の青銅器文化と接触していた。年代については一致しないが,S.V.キセレフによって推測された,前 1750~1200年という説が信じられている。南部ザウラル地域では,K.B.サリニコフによって,フェドロフ期,アラクリ期,ザマラエフ期に編年されているが,確実なものではない。すなわち,ミヌシンスク地方におけるフェドロフ期の遺跡は明確ではない。前 2000年の終末に,エニセイ川,オビ川上流ではカラスク文化に,またカザフスタン,南部プリウラル,ザウラルの地域ではタザバギャブ文化に交代する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アンドロノボ文化」の意味・わかりやすい解説

アンドロノボ文化
あんどろのぼぶんか
Андроново/Andronovo

紀元前二千年紀中ごろから前一千年紀初めまで、西シベリアの南部一帯に広く分布した青銅器文化。銅と錫(すず)を坑道によって採掘し、これの合金である青銅で、刀子(とうす)、短剣、鎗(やり)、斧(おの)、鎌、耳輪などを、鍛造はもとより鋳造によってもつくった。生業の中心は家畜飼養で、ウシ、ウマ、ヒツジが対象とされた。副次的に小麦の栽培もなされており、したがって集落は、農耕に適した川沿いの冠水肥沃(ひよく)地に形成されている。たとえば、アレクセーエフ遺跡では、20軒以上の住居址(し)が調査されているが、いずれも貯蔵用の穴と、暖房用および調理用の2種類の炉を有していた。つまり、定住度の高い半牧半農の生活形態である。彼らはこの地域における最初の騎馬民族とみなされている。遺骸(いがい)は低い盛り土墳に屈葬で埋められ、まれに火葬もなされた。また、家畜を犠牲にした豊饒(ほうじょう)儀礼が行われたらしく、土壙(どこう)から、焼かれた家畜の骨といっしょに、食物を入れた壺(つぼ)や小麦が出土している。

[大塚和義]

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百科事典マイペディア 「アンドロノボ文化」の意味・わかりやすい解説

アンドロノボ文化【アンドロノボぶんか】

アルタイ文化

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世界大百科事典(旧版)内のアンドロノボ文化の言及

【ウラル語系諸族】より

…原フィン・ウゴル文化は青銅器時代になると原フィン文化と原ウゴル文化に分裂する。両者はそれぞれボルガ・カマ流域のボロソボ文化および南シベリアのアンドロノボ文化に比定されるが,とくに前者は従来までの狩猟・漁労に加えて牧畜・農耕を開始,生産経済に到達したのである。原ウゴル文化は前1千年紀中葉に原オビ・ウゴルと原マジャールに二分,前者が鉄器時代のウスチ・ポルイ文化を経て現存のハンティ族と,マンシ族に連なるのに対し,後者はその後遊牧化し,南ロシアを経由してパンノニアへ移住したマジャール人となる。…

※「アンドロノボ文化」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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