アーバンデザイン(その他表記)urban design

デジタル大辞泉 「アーバンデザイン」の意味・読み・例文・類語

アーバン‐デザイン(urban design)

都市設計。都市計画全体を、造形自然歴史などの諸要素を総合して具体的に設計したもの。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「アーバンデザイン」の意味・わかりやすい解説

アーバン・デザイン
urban design

アーバンは都市的,都会的という意味で,都市デザインともいう。都市の形態景観を整え美しくするため,欧米で発達した手法である。都市空間は,多くの建築物,道路樹木,ストリート・ファニチャーなどによって構成されている。アーバン・デザインとは,この全体をひとつのまとまったデザイン対象としてとらえ,その空間性,形態,色彩などをデザインすることである。目的としては,美しさだけでなく,安らぎ,楽しさ,驚き,個性などさまざまの価値が求められ,人間の感性面の価値も都市づくりに取り入れようとするものである。物的な都市を形成するためには,都市全体の社会的需要量を算定し,長期的にみた施設配置や合理的な組合せ,土地利用などを求める狭義の都市計画手法があり,他方,建築,道路,橋など個々の要素を具体的に造っていく設計やデザインがある。前者は総合的ではあるがやや抽象的であり,後者は具体的ではあるが個別的で総合性に欠けている。そこで,この両者中間にあって,都市を総合性をもった具体的な空間,形態として形成する手法としてアーバン・デザインが生まれた。

 しかしアーバン・デザインは,都市を巨大な1個の建築としてとらえ,その全体を個々の施設に至るまで1人で設計しデザインしようというものではない。都市は,多様な目的をもつ多数の人々の行為が長い歴史のなかで形成していくもので,1人の手には負えない。だが多数の人々の恣意(しい)にまかせたら,都市は混乱し,空間の秩序は乱れ,個性のない雑然とした都市になり,居住者にとっても楽しいものではなくなる。そこでアーバン・デザインは,多くの主体や,矛盾する目的の存在を認めながら,都市をまとまりのある豊かな形態にしていこうとする。すなわち,都市全体のデザイン・ポリシーや方向性,ルールなどを定め,大枠の骨組みを示し,個々の建築や施設を大筋に沿うよう調整していく方法がとられる。したがってアーバン・デザインとは,全体と個,個と個の関係を考えていく〈関係のデザイン〉であり,また都市空間をまとまったひとつのものとしてとらえる〈環境のデザイン〉でもある。こうした都市のデザイン・ポリシーや具体的な骨組みを考え,個々の施設をデザイン的に調整し誘導してプロデュースしていく専門家がアーバン・デザイナーである。都市の実態に詳しく,公正な立場に立って誘導,調整することができる都市自治体内に,アーバン・デザイン・チームをもつことが望ましい。1972年横浜市は日本で初めてアーバン・デザイン・チームを設置したが,他の自治体にも徐々に波及しつつある。とくに専門的問題の検討や,自治体内部に十分なスタッフがいない場合,住民みずからの立場で考えていくためには,民間のアーバン・デザイナーも必要になる。

 アーバン・デザインの実施上重要なことは,都市全体の主体性,総合性,市民性が十分に確立していることであり,見せかけや思いつき的な都市化粧術に終わらせてはならない。また,公共セクターだけの問題にとどまるものでもない。せっかく美しい広場を造っても,周辺を取り巻く民間建築物のデザインが不調和でばらばらだったり,陳腐なベンチやごみ箱が置かれたのでは,全体のデザインを崩してしまう。大局を押さえながら,空間のディテールまで考えていかなくてはならない。それには,狭義の都市計画や技術や都市のソフト面を含めた広義の計画組織のなかにアーバン・デザインを位置づける必要がある。また個々の建造物その他もアーバン・デザインによってより効果的な存在となるのであり,したがって公的サイドだけでなく,都市空間形成の主体である建築物のオーナーをはじめ,建築家,広告業者やデザイナー,電柱を立て利用する公社や会社など,すべての人々の問題でもある。これらの人々に,自分の立場だけでなく,自分たちの周辺の都市空間をつくっていくという意識が必要である。市民のなかに,都市をみなで美しく楽しくしていく意識が育ったとき,そのような市民と都市自治体の協働によって都市空間を構成していくのが現代のアーバン・デザインである。
都市計画
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アーバンデザイン」の意味・わかりやすい解説

アーバンデザイン

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