日本大百科全書(ニッポニカ) 「イグルー」の意味・わかりやすい解説
イグルー
いぐるー
iglu エスキモー語
家を意味するエスキモー語であるが、とくにカナダ北東部で冬季に使用される雪小屋の名称としてよく知られる。イグルーの設営はおもに男子が行う。まず探り棒を雪中に入れて、しかるべき固さと厚さをもった雪の層を探る。次にシャベルで表層の軟雪を取り除き、締まった雪の層の上に、パナとよばれるカリブーの角(つの)でできた雪ナイフでイグルーの輪部を描く。ついでこの雪ナイフを用いて幅20インチ(1インチは約2.5センチメートル)、奥行25インチ、高さ4インチほどのブロックを切り出していく。ブロックは、上段に積むものをいくぶん内側に置いてゆき、全体として蜂(はち)の巣状に積み上げる。最後に屋根となるいくぶん小さめのブロックを積み上げる。壁用のブロックを切り出した面は床として使用する。以上の作業はイグルーの内側にいる男子によって行われるが、イグルーの外側にいる女子はシャベルを用いて軟雪をブロックの継ぎ目や穴のあいたところに詰め込む。そのあとでイグルー内部に寝台や食卓を、これもまた雪を用いてつくる。イグルーの主要部が完成したところで、次に通路とポーチをイグルーの入口に接続してつくる。ポーチは貯蔵庫、犬小屋として用いられるが、防風としての機能も重要である。
[岡 千曲]