イタイプダム(英語表記)Represa de Itaipú

デジタル大辞泉 「イタイプダム」の意味・読み・例文・類語

イタイプ‐ダム(Itaipu Dam)

南アメリカブラジルパラグアイ国境を流れるパラナ川に造られた多目的ダム。パラグアイのシウダー‐デル‐エステの北に位置する。1975年着工。1991年竣工。最大堤高196メートル。発電を主とし、両国共同管理される。中国三峡ダムの完成以前は世界最大の発電容量を誇った。イタイプーダム。

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改訂新版 世界大百科事典 「イタイプダム」の意味・わかりやすい解説

イタイプ・ダム
Represa de Itaipú

ブラジル,パラグアイ両国が共同で,国境を流れるパラナ川に建設中の,発電を主とし,舟航,灌漑洪水調節漁業観光に用いる多目的ダム。発電所には70万kWの発電機18基を設け,1260万kWの世界最大の水力発電を行う。貯水池は満水面が標高220mで,長さは170km,湛水(たんすい)面積350km2,総貯水量は290億m3である。ダムは,高さ196m,長さ7744mで,施工しやすくするためダム頂が曲がりくねった平面形状となっており,主ダムである堤体積1182万m3中空重力ダム,主ダムの左岸側に接続する1690万m3ロックフィルダム両岸の端部の1180万m3のアースフィルダムからなる。そして14門のゲートで,最大6万2200m3/sの洪水を放流する。1975年に着工され,ダム本体は82年に完成,発電所を含めた全施設は88年竣工を目途に着手したが,電力需要がのびないため全発電機の完成の見込みはたっていない。総建設費は約90億ドルであるが,この膨大な投資額を要する発電所であるにもかかわらず,電力コストは他の発電所の平均の70%くらいで非常に安い。このダムの膨大な投資によって新しい消費市場が生まれ,さらに将来性を見込んだ企業によって周辺の社会経済的発展が期待されている。
セッテ・ケーダス滝
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イタイプダム」の意味・わかりやすい解説

イタイプダム
Itaipú Dam

パラグアイのシウダーデルエステ北部,ブラジルとパラグアイの国境を流れるパラナ川上流にある中空重力ダム(→重力ダム)。水力発電用ダムとして世界有数の出力をもち,ダム直下の発電所に設置された 18基の巨大タービン発電機による発電出力は 1万2600MWに上る。パラグアイとブラジルの共同事業で建設され,複数のダムと放水路がパラナ川上流 8kmにわたって弧を描きながら伸びている。ダム本体は 1975~82年に建設され,高さは 196mで,巨大なコンクリートを接合してつくられ,中部には空洞がある。上流側の壁は二つのバットレス(控壁)によって支えられ,下流側は巨大なコンクリート壁になっている。中空重力ダムとしては世界最大級で,貯水池は北側約 160kmにわたって延び,かつては壮大な景観を誇ったグアイラ滝も完全に水没した。

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百科事典マイペディア 「イタイプダム」の意味・わかりやすい解説

イタイプ・ダム

ブラジル,パラグアイ両国の国境を流れるパラナ川に建設された多目的ダムで,発電を主とし,舟航,灌漑(かんがい),漁業,観光などに用いられる。貯水池面積350km2,高さ220m,1260万kWの世界最大の水力発電を行う。1975年着工,1985年完成。周囲の景観が破壊され,マラリアを媒介する蚊が発生するようになった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イタイプダム」の意味・わかりやすい解説

イタイプ・ダム
いたいぷだむ
Itaipu Dam

南アメリカ、ブラジルとパラグアイの国境を流れるパラナ川にあるダム。堤頂の長さ7.37キロメートル、最大堤高196メートル、有効貯水容量190億立方メートルの規模をもち、中空重力、ロックフィル、アースフィルなど、種々の型式を組み合わせたコンバインダムで、1975年着工、82年完成。総出力1260万キロワットの発電設備が完備すると世界最大の水力発電所となる。

[石﨑正和]

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世界大百科事典(旧版)内のイタイプダムの言及

【パラグアイ】より

…とくに石油代替エネルギー開発政策の主軸を担う水力発電所建設計画はパラグアイ経済の牽引車としての役割を果たしてきた。ブラジルとの共同事業であるイタイプ・ダム建設計画はパラナ川における発電能力約1260万kW(当時世界最大)の水力発電所建設事業で,〈イタイプ・ブーム〉と称され,パラグアイ経済に長期的好況をもたらした。イタイプ・ダム建設工事が終了した後も,新たな大プロジェクトとして出力400万kWのヤシレタ・ダム建設計画が進められ,経済不況からの脱却が目指された。…

※「イタイプダム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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