ブラジル,パラグアイ両国が共同で,国境を流れるパラナ川に建設中の,発電を主とし,舟航,灌漑,洪水調節,漁業,観光に用いる多目的ダム。発電所には70万kWの発電機18基を設け,1260万kWの世界最大の水力発電を行う。貯水池は満水面が標高220mで,長さは170km,湛水(たんすい)面積350km2,総貯水量は290億m3である。ダムは,高さ196m,長さ7744mで,施工しやすくするためダム頂が曲がりくねった平面形状となっており,主ダムである堤体積1182万m3の中空重力ダム,主ダムの左岸側に接続する1690万m3のロックフィルダム,両岸の端部の1180万m3のアースフィルダムからなる。そして14門のゲートで,最大6万2200m3/sの洪水を放流する。1975年に着工され,ダム本体は82年に完成,発電所を含めた全施設は88年竣工を目途に着手したが,電力需要がのびないため全発電機の完成の見込みはたっていない。総建設費は約90億ドルであるが,この膨大な投資額を要する発電所であるにもかかわらず,電力コストは他の発電所の平均の70%くらいで非常に安い。このダムの膨大な投資によって新しい消費市場が生まれ,さらに将来性を見込んだ企業によって周辺の社会経済的発展が期待されている。
→セッテ・ケーダス滝
執筆者:柴田 功
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南アメリカ、ブラジルとパラグアイの国境を流れるパラナ川にあるダム。堤頂の長さ7.37キロメートル、最大堤高196メートル、有効貯水容量190億立方メートルの規模をもち、中空重力、ロックフィル、アースフィルなど、種々の型式を組み合わせたコンバインダムで、1975年着工、82年完成。総出力1260万キロワットの発電設備が完備すると世界最大の水力発電所となる。
[石﨑正和]
…とくに石油代替エネルギー開発政策の主軸を担う水力発電所建設計画はパラグアイ経済の牽引車としての役割を果たしてきた。ブラジルとの共同事業であるイタイプ・ダム建設計画はパラナ川における発電能力約1260万kW(当時世界最大)の水力発電所建設事業で,〈イタイプ・ブーム〉と称され,パラグアイ経済に長期的好況をもたらした。イタイプ・ダム建設工事が終了した後も,新たな大プロジェクトとして出力400万kWのヤシレタ・ダム建設計画が進められ,経済不況からの脱却が目指された。…
※「イタイプダム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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