改訂新版 世界大百科事典 「イネハモグリバエ」の意味・わかりやすい解説
イネハモグリバエ
rice leaf-miner
Agromyza orizae
双翅目ハモグリバエ科の昆虫。1901年に青森県で発見された寒冷地のイネの害虫。北海道西部から,東北・北陸地方にかけて分布している。幼虫がイネ(苗代の稲苗)やマコモの葉に潜入して葉肉を食害するのでこのように呼ぶ。成虫は,体長2~3mm,体は全体に黒色,胸部と腹部はやや光沢を帯びる。幼虫はうじむし形,成熟幼虫では,体長5~6mm,青緑色を呈する。蛹化(ようか)は葉の表面で行われる。さなぎには,細く褐色を呈するものと,太く黒色のものがあり,後者が越冬する。成虫は,年2~3回発生する。第1化期の成虫は,5月上旬から中旬にかけて発生し,苗代やマコモの葉に産卵管を刺して傷をつけ,葉肉内に産卵する。卵は数日後に孵化(ふか)し,約10~14日でさなぎとなる。さなぎの期間は約10日,これから羽化したのが第2化期の成虫である。第2化期は6月上旬からはじまり,下旬にはほとんどがさなぎとなり,そのまま越冬するが,一部は羽化して第3化期の成虫となる。被害をうけたイネは,葉先が袋状に空となり,袋状の部分に幼虫が潜入している。またイネ自体も長さが短く,分げつも少なくなる。
執筆者:篠永 哲
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報