日本大百科全書(ニッポニカ) 「イブン・ズフル」の意味・わかりやすい解説
イブン・ズフル
いぶんずふる
Abū Marwān ‘Abd al-Malik Ibn Abi'-l-‘Alā' Zuhr
(1113?―1162)
イスラムの医家、思想家。ラテン名をアベンゾアールAvensoarという。セビーリャの出身。祖父、父ともに医家で、とくに父は見識が高く、当時広く聖典視されていたイブン・シーナーの『医学典範』の価値を認めず、その書冊の紙片を反故(ほご)同然に扱ったと伝えられる。イブン・ズフルは臨床医としての勉学に努め、名声を博するに至った。臨床経験をなによりも重要と考え、自らの判断に基づき独自の医説をたてた。その根拠とするところはガレノスの所説であるが、ときとしてそれに反対意見を表明している。
[大鳥蘭三郎]