改訂新版 世界大百科事典 「イラガ」の意味・わかりやすい解説
イラガ (刺蛾)
鱗翅目イラガ科Limacodidaeに属する昆虫の総称,またはそのうちの1種を指す。成虫は小型から中型,幼虫はドロップまたはナメクジ形の芋虫。ほとんど全世界に分布し,日本には27種を産する。幼虫は腹脚と尾脚を欠き,肉質突起があって,毒針毛の生えているものが多く,これに触れると疼痛(とうつう)をおぼえる。イラムシと俗称されている。イラガMonema flavescensは,中国,シベリア南東部,朝鮮半島,日本に分布する。ほとんど日本全国で見られる普通種。開張3.3cm内外。体,翅とも黄色,前翅の外半は褐色をしている。幼虫は鮮やかな黄色で,棘状(きよくじよう)突起は緑色を帯び,黒色の毒針が生えている。背面には暗い褐色の斑紋がある。カキ,サクラ,ウメ,クルミなどひじょうに多くの植物に寄生する。ふつう年に2回発生し,夏から秋に幼虫が見られる。繭は樹上や枝につくられ,白色で固く,黒い条があり,小鳥の卵のような形をしていてスズメノショウベンタゴと呼ばれている。前蛹態(ぜんようたい)で越冬するが,一部の地方では,これをタマムシと呼んで釣餌として市販されている。
執筆者:井上 寛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報