イラーキー(読み)いらーきー(英語表記)Fakhr al-Dīn lbrāhīm ‘Irāqī

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イラーキー」の意味・わかりやすい解説

イラーキー(Abū-l-Qāsim al-‘Irāqī)
いらーきー
Abū-l-Qāsim al-‘Irāqī

生没年不詳。13世紀後半にイスラムで活躍した錬金術師。彼は実験に基づき、多くの著書を出した。そのうち『金の培養の知識の書』Kitāb al-‘ilm al-muktasab fī zirā‘at al-dhahabでは、金属の本質的単一性と金属変換の可能性を述べている。また『錬金術と呼ぶ学問についての七つの地域の書』Kitāb al-aqālīm al-sab‘a fī-l-‘ilm al-mausūm bil-san‘aでは、錬金術の社会的な面、つまりその技術の秘密の義務を述べた。このことは当時の錬金術師たちにとって歓迎すべき見解であった。

平田 寛]


イラーキー(Fakhr al-Dīn lbrāhīm ‘Irāqī)
いらーきー
Fakhr al-Dīn lbrāhīm ‘Irāqī
(1211―1289)

ペルシア詩人神秘主義者。ハマダーンに生まれる。遊行僧一行に加わって郷里を離れ、神秘主義の道を歩み、インド、西アジアを広く遍歴し、トルココニヤコンヤ)でサドル・ウッディーンに師事ダマスカスで死去した。代表作に神秘主義詩集『イラーキー詩集』、神秘主義叙事詩『恋人の書』があり、散文作品には神秘主義思想を論じ28閃光(せんこう)(章)からなる『閃光の書』がある。

[黒柳恒男 2016年10月19日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イラーキー」の意味・わかりやすい解説

イラーキー
Irāqī, Fakhr al-Dīn Ibrāhīm

[生]1211. ハマダーン
[没]1289.11. ダマスカス
ペルシアの神秘主義詩人。青年時代に神秘主義遊行僧の一行にひかれて郷里を捨て,インドのムルタンにおけるスフラワルディー教団の開祖ザカリヤーに 25年仕えたが,のちにトルコ,エジプトを回り,シリアで没した。『イラーキー詩集』 Dīwān-e Irāqīの大半は神秘主義抒情詩から成り,この分野で定評が高い。叙事詩『恋人たちの書』`Ushshāq-nāmeも名高い。散文作品『閃光』 Lama`ātは神秘主義思想に関する書である。

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