日本大百科全書(ニッポニカ) 「イーゼンハイム祭壇画」の意味・わかりやすい解説
イーゼンハイム祭壇画
いーぜんはいむさいだんが
1513~15年、グリューネワルト作。板に油彩。フランス、コルマルのウンターリンデン美術館所蔵。アルザス地方イーゼンハイムの聖アントニウス教団修道院のためにつくられたこの祭壇は、中央の部分で観音開きになる二重の扉式祭壇で、扉の表裏と台座の部分に宗教画が描かれている。扉を全部閉めた第一の場面(269.2センチメートル×307.3センチメートル)は、磔刑(たっけい)像を中心とするが、画像は全身腐敗し始めた傷に覆われ、絶望的な死が表現されている。その画面を左右に開くと、場面は一転して聖告(左扉)、降誕(中央)、復活(右扉)の目覚ましい生の歓喜にとってかわる。劇的な精神の高揚を促すゲルマン的造形の特質がここにある。第三の場面は、聖アントニウスの画像(左右扉)および彫像(中央)であるが、彫像はハーゲナウNikolaus von Hagenau(1460ころ―1538ころ)の作と推定されている。
[野村太郎]