ウイルス性髄膜炎

内科学 第10版 「ウイルス性髄膜炎」の解説

ウイルス性髄膜炎(ウイルス感染症)

(1)ウイルス性髄膜炎(viral meningitis)
概念
 ウイルス感染した髄膜の炎症により発症する. ウイルス性髄膜炎細菌性髄膜炎より頻度が高いが,原因ウイルスを特定できないことが多い.原因ウイルスとして85%がエンテロウイルス属でエコーウイルスとコクサッキーB群ウイルスの頻度が高い.初夏から増加しはじめ,夏から秋にかけて流行がみられる.その他手足口病の起因病原体であるエンテロウイルス71や,ムンプスウイルス単純ヘルペスウイルス1,2型などがあげられる.予後は良好で2~3週間で治癒することが多い.
臨床症状
 発熱頭痛,悪心・嘔吐があり,髄膜刺激症状(項部硬直,Kernig徴侯,Brudzinski徴侯, 羞明)を認める.意識障害はあっても傾眠程度で軽い.腹痛,下痢もよくみられる.
検査成績
 末梢白血球は正常のことが多い. 髄液は水様透明で細胞数は一般に1000 /μL以下100~500程度が多い.病初期は好中球優位のこともあるが,3日以内にリンパ球優位となる.蛋白は50~100 mg/dL,糖は正常範囲のことが多い.髄液の塗抹染色標本では微生物は認められず,一般細菌培養でも検出されない. ウイルス抗体価測定で髄液中のIgM抗体検出あるいは血清ウイルス抗体価を入院時と2週間後に測定し4倍以上の変動があれば起炎ウイルスの可能性が高い. 髄液からのウイルス分離の確率が低いため,PCR法によるウイルス遺伝子の検出を行う.
診断
 発熱と頭痛,髄膜刺激症状を示す場合,本症を疑う.髄液所見がリンパ球優位で1000/μL以下,糖が正常範囲の場合に細菌,結核菌,真菌などが検査で否定されたときに無菌性髄膜炎と診断される.PCR法によるウイルス核酸の検出,血清ウイルス抗体価の4倍以上の変動があれば起炎ウイルスを特定できウイルス性髄膜炎と診断される.
 原因不明の再発性無菌性髄膜炎はMollaret髄膜炎とよばれ,多くは単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)が原因である.
 鑑別診断としてMycoplasma pneumoniaeは一見ウイルス様の髄膜炎を呈することがある.マイコプラズマ血球凝集抗体価(HA抗体価)160倍以上,寒冷凝集素価128倍以上ある場合は,マイコプラズマとしての治療(テトラサイクリンエリスロマイシン)を行う.
治療・予後
 脱水のために輸液療法が必要で安静にし,頭痛・発熱への対処療法を行う.多くは後遺症なく自然治癒することが多い. 単純ヘルペスウイルスや水痘・帯状疱疹ウイルスの可能性が疑われる場合は,アシクロビルを投与することが多い.[原 英夫]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

家庭医学館 「ウイルス性髄膜炎」の解説

ういるすせいずいまくえん【ウイルス性髄膜炎 Viral Meningitis】

[どんな病気か]
 ウイルス性髄膜炎は無菌性髄膜炎の大半を占め、コクサッキー、エコー、ムンプスなどのウイルスが原因でおこります。
 かぜの症状に引き続き、発熱、頭痛が急激におこりますが、細菌性髄膜炎よりは症状が軽く、単純ヘルペスウイルスやサイトメガロウイルスによる髄膜炎以外は、基礎疾患(髄膜炎をおこす原因となった病気)がなければ自然経過でもよくなります。
[治療]
 髄膜炎のなかでは比較的多くみられる病気で、症状に応じた治療(対症療法)を行なえば、ほとんどが後遺症を残さずに治ります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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