四訂版 病院で受ける検査がわかる本 「ウイルス抗体価」の解説
ウイルス抗体価
基準値
陰性(-)
ウイルス抗体価とは
体の中に侵入してきた、あるウイルス(抗原)に対して対抗する物質(抗体)の力価(量や強さ)のこと。
■ウイルス感染症の経過略図
ウイルスの大きさは、20~450nm。nmはナノメートル、1nmは10億分の1m。例えば風疹ウイルスは直径約70nm。すなわち0.000007mm。
ウイルスに感染すると一定期間後(ウイルスにより異なる)に発症、IgM抗体、IgG抗体が増加
ウイルスの感染の有無を調べる検査です。妊婦が風疹ウイルスに感染すると胎児が奇形となるため、罹患時期を特定(推定)することが重要です。
ウイルスに感染していれば陽性
ウイルス感染症の診断も細菌感染症と同様に、ウィルスを同定(特定)することが望ましいのですが、多くの場合、ウイルスの同定は困難です。
肝炎ウイルスやエイズウイルスなどのようなウイルスの同定、ウイルス量の推定が診断、治療、治療効果の判定上重要な場合は、特別な方法を用いてウイルスを同定しています。一方、そのほかの多くのウイルス感染症では、感染ウイルスではなく、ウイルス感染によって上昇するウイルス抗体価の検査を行って、診断の確認をしています。
感染から数週間たたないと診断できない
ウイルスに感染すると、左の図のグラフに示すように、侵入ウイルスは標的臓器で増殖し、感染症が発症します。発症とほぼ時を同じくしてIgM抗体(→参照)が、続いてIgG抗体が出現、血液中で上昇します。
したがって、ウイルス感染から数週間たたないと抗体価による診断ができないという欠点があります。
ペア血清とIgM抗体で診断
通常、ウイルスの多くはすでに昔に感染しており、そのときに体には抗体がつくられています。このため、ウイルス感染が疑われるときに抗体価を測定しても、抗体はすでに存在している場合が多いわけです。
そこで、抗体価の検査は、ウイルス感染が疑われた時点とそれから10~14日後の血清を用いて抗体価を測定し(ペア血清)、あとから測定したほうが4倍以上の上昇を認めた場合、感染があったと診断します。また、IgM抗体は、感染後比較的早期に上昇するため、IgM抗体を測定して、これが高値である場合は感染していると診断できます。
このように、ペア血清、もしくはIgM抗体価測定により、ウイルス感染を診断しています。
妊婦では風疹ウイルスの感染を特定することが重要
風疹は、妊婦が感染すると、胎児が奇形(先天性風疹症候群:胎児の感覚器が形成される妊娠3カ月以内の感染が影響する)となるため、妊婦では
医師が使う一般用語
「ウイルスこうたいか」
出典 法研「四訂版 病院で受ける検査がわかる本」四訂版 病院で受ける検査がわかる本について 情報