日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ウィンザーの陽気な女房たち
うぃんざーのようきなにょうぼうたち
The Merry Wives of Windsor
イギリスの劇作家シェークスピアの喜劇。時のイギリス女王エリザベス1世の「恋に悩むフォルスタッフが見たい」との要望にこたえ、わずか2週間で書き上げたといわれる。1597年4月23日、ウィンザー宮殿で初演されたと推定される。フォルスタッフは、同じ作者の『ヘンリー4世』(1597)で活躍する愉快な老兵であるが、この劇では、陽気な2人の人妻フォード夫人とページ夫人に同文の恋文を送ったことから、女たちからさんざんに嘲弄(ちょうろう)されたあげく、籠(かご)に入れられて汚い川に投げ込まれたり、森の妖精(ようせい)に扮(ふん)した人々からいじめられたりする。軽喜劇であるが、シェークスピアとしては唯一の現代市民劇となっている。日本では1912年(明治45)帝国劇場初演。
[小津次郎]
オペラ
この喜劇には二つのオペラ作品がある。一つは19世紀前半のドイツの作曲家オットー・ニコライの同題のオペラで、1849年ベルリン初演。もう一つはイタリアのベルディ作曲の『ファルスタッフ』Falstaffで、1893年ミラノ初演。いずれも今日のオペラのレパートリーとしてよく上演されるが、とくに後者はベルディ最後のオペラでもあり、楽劇風な扱いに彼の円熟した技量が示された名作である。
[三宅幸夫]