イギリスの生化学者。イングランド中部のレスター生まれ。幼少時は西アフリカで過ごし、1973年ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ卒業、1976年イギリス医学研究会議(MRC)分子生物学研究所から博士号を取得。1981年からロンドン大学インペリアル・カレッジ(現、インペリアル・カレッジ・ロンドン)とケンブリッジ大学遺伝学研究所で博士研究員として働き、その後MRC分子生物学研究所のプログラムリーダー、副所長などを務め、2014年に同研究所名誉教授となった。2004年ナイトの称号を授けられたほか、王立協会やトリニティ・カレッジなど多数の研究機関のフェローに選ばれている。
1980年代からウィンターは、遺伝子変異とタンパク質の機能の研究に取り組み、とくに、病気の治療に使える抗体の作製法に焦点をあてていた。当時、治療薬としての抗体は、マウスからつくられていたため副作用、副反応が大きいという問題に直面していた。ウィンターは、それを減らすためマウスでつくられた治療用抗体の一部を、タンパク質工学の手法を応用し、人間の抗体(ヒト化モノクローナル抗体)に置き換えることに成功。この成功はのちに、乳がん治療薬となる「トラスツズマブ」(商品名ハーセプチン)、大腸がんなどに使われる「ベバシズマブ」(商品名アバスチン)の開発につながった。
その後、アメリカのミズーリー大学の特別栄誉教授ジョージ・P・スミスが確立した、ファージディスプレーによる抗体の医薬品開発に取り組んだ。がん細胞などに結合し、増殖を抑えるDNA断片を無数に集め、それによってつくられたタンパク質をファージディスプレーと指向性進化を併用した方法で探索。1994年には、より効率的に抑制作用の強いタンパク質(抗体)をみつけることに成功した。がんなど病気の細胞などを攻撃する精度も従来の抗体より数段上がり、これによって、リウマチなど自己免疫疾患の原因となる抗体「TNFα(アルファ)」(腫瘍壊死(しゅようえし)因子α)に結合して、TNFαの働きを抑える抗体がつくられた。この抗体は、2002年に自己免疫疾患治療用ヒト抗体医薬品「アダリムマブ」(商品名ヒュミラ)としてアメリカ食品医薬品局(FDA)から製造販売を承認された。リウマチ性関節炎以外の炎症系疾患の治療にも適用拡大されている。
ウィンターは、研究成果をもとにバイオテクノロジーのベンチャー企業をいくつか創設。1989年設立の「Cambridge Antibody Technology」はアメリカの製薬会社アストラゼネカに、2000年設立の「Domantis」はイギリスの製薬会社グラクソ・スミスクラインに買収された。
1995年キング・ファイサル国際賞、1999年ウィリアム・コリー賞、2011年ロイヤル・メダルなどを受賞。2018年には、「ファージディスプレーによるタンパク質や抗体の開発」の業績で、ジョージ・P・スミスとともにノーベル化学賞を受賞した。「指向性進化による酵素の合成」に貢献したアメリカのカリフォルニア工科大学教授フランシス・アーノルドとの同時受賞であった。
[玉村 治 2019年3月20日]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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