ウィーザー
Friedrich von Wieser
生没年:1851-1926
オーストリアの経済学者。ハプスブルク帝国上級官吏を父として,ウィーンに生まれる。ウィーン大学で法律学,歴史学を学んだが,C.メンガーの影響で経済学に転じた。1884年からプラハのドイツ大学で講義したが,1903年メンガーの後継者としてウィーン大学に迎えられ,22年名誉教授。第1次大戦末期に商務大臣,上院議員を務めたこともある。
友人E.vonベーム・バウェルクとともに,メンガーの《国民経済学原理》(1871)を出発点として経済学研究にすすみ,メンガーの価値論を拡充して,オーストリア学派の形成に貢献した。1880年代の2著作《経済価値の起源と主要法則》(1884),《自然価値論》(1889)で,費用を間接的効用とみなし,所得分配を消費財の価値の帰属として説明したほか,限界効用理論を貨幣理論と結びつける研究も行った。《社会経済の理論》(1914)は,この学派唯一の体系的著作と評される。また社会学的な関心を終生もちつづけ,晩年には権力についての透徹した省察を残している。
執筆者:八木 紀一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ウィーザー
うぃーざー
Friedrich von Wieser
(1851―1926)
オーストリア学派の経済学者。ウィーンに生まれ、初めはウィーン大学で法律学を修めたが、のちにハイデルベルク、ライプツィヒ、イエナの各大学で経済学を学んだ。プラハ大学教授やウィーン大学教授を歴任し、第一次世界大戦中は商務大臣に就任したこともある。メンガーの後継者としてその理論の発展に努め、限界効用理論を生産要素の価格の決定にまで拡張して帰属理論による分配論を展開し、価格理論と分配理論を関連づけた。またメンガーの主観価値論を貨幣論へ適用し、所得数量説を提唱した。さらに彼は、効用と社会勢力の関連や経済の一般的意味と社会勢力との関係の分析にも深い関心を示して、晩年には主として社会学の研究に力を注いだ。主要な著作には『経済価値の起源と主要法則』(1884)、『自然価値論』(1889)、『社会経済の理論』(1914)などがある。
[志田 明]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
ウィーザー
Wieser, Friedrich Freiherr von
[生]1851.7.10. ウィーン
[没]1926.7.22. ザルツブルク,ザンクトギルゲン
オーストリアの経済学者,社会学者。ウィーン大学で法学,歴史学を学んだのち,C.メンガーの影響で理論経済学に転じ,ハイデルベルク,イェナ,ライプチヒ大学で K.クニース,W.ロッシャー,B.ヒルデブラントらに学ぶ。 1903年ウィーン大学教授。第1次世界大戦中は商務大臣をつとめ,戦後ウィーン大学へ復帰。主観価値説の主唱者の一人で,メンガーの限界効用理論を生産要素の価値の決定理論にまで拡張する帰属理論の定式化で著名。社会学では,今日の大衆社会を予見した。主著『自然価値論』 Der natürliche Wert (1889) ,『社会経済の理論』 Theorie der gesellschaftlichen Wirtschaft (1914) ,『勢力の法則』 Das Gesetz der Macht (26) など。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
ウィーザー
オーストリアの経済学者,ウィーン大学教授。オーストリア学派に属する。費用は財の効用の喪失であるとし,効用で生産と分配の全体を説明することによって,師C.メンガーの主観的限界効用学説を一歩進めた。主著の一つ《社会経済の理論》はこの学派を代表する体系的業績とされる。さらに《経済価値の起源と主要法則》《自然価値論》などがある。
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
世界大百科事典(旧版)内のウィーザーの言及
【オーストリア学派】より
…このオーストリア資本理論は,のちに北欧の経済学者[J.ウィクセル]により,ワルラスの一般均衡理論に導入される。また,メンガーのもう一人の主要な後継者[F.ウィーザー]は,1889年に《自然価値論》を刊行,1903年にメンガーの後を継いでウィーン大学教授に就任し,14年には《社会経済の理論》を公刊した。彼は帰属価格の厚生経済学的意味を明らかにし,先駆的な社会主義経済理論を展開している。…
【経済学説史】より
…メンガーの後継者の一人,[ベーム・バウェルク]は《資本の積極理論》(1889)で利子の三原因を説き迂回生産の重要性を強調したが,その資本理論は[K.ウィクセル]によって一般均衡理論に導入される。メンガーのもう一人の後継者F.ウィーザーは,価格の厚生経済学的意味を明らかにし,先駆的な社会主義経済理論を展開している。 限界革命をになう3人のなかで,古典派経済学と最もはげしく対決したのはジェボンズであった。…
【独裁】より
…〈主権的独裁〉は,〈革命独裁〉〈超法的独裁〉ともよばれ,フランス革命におけるロベスピエール独裁,ロシア革命におけるボリシェビキ党独裁などが,この類型とされる。 シュミットの国法学的な独裁の類型化に対し,同時代のF.ウィーザーは,〈秩序独裁Ordnungsdiktatur〉と〈革命独裁Revolutionsdiktatur〉とを区別した。〈委任的独裁〉は多くの場合〈秩序独裁〉であり,革命運動の弾圧としてあらわれる点で〈反革命独裁〉である。…
※「ウィーザー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」