ウィーゼル(読み)うぃーぜる(英語表記)Torsten Nils Wiesel

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウィーゼル」の意味・わかりやすい解説

ウィーゼル(Torsten Nils Wiesel)
うぃーぜる
Torsten Nils Wiesel
(1924― )

スウェーデンの神経生理学者。ウプサラに生まれる。父はストックホルムの病院で精神病科の主任を務めていた。カロリンスカ研究所で医学を修め、1955年にアメリカに渡り、ジョンズ・ホプキンズ大学で神経学の研究に従事した。1959年ハーバード大学に移り、生理学準教授となり、1964年教授に昇格した。1983年ロックフェラー大学の教授となり、1991年同大学の総長に就任した。

 1958年以来、長年にわたってヒューベルと共同研究を行った。視覚に関する感覚情報処理のメカニズムの研究に着手し、大脳皮質にある視覚ニューロンに、単純型検出ニューロンと複雑型検出ニューロンの2種類があることを発見した。このニューロンの研究を進めた結果、外界の刺激を受けて応答を示すまでの感覚情報処理機構の階層性モデルを提示し、知覚研究に多大な影響を与えた。1981年「大脳皮質視覚野の情報処理に関する発見」に対し、ヒューベルとともにノーベル医学生理学賞を受賞した。また大脳の機能の分化を解明したR・W・スペリーも同時に受賞した。

[編集部]


ウィーゼル(Elie Wiesel)
うぃーぜる
Elie Wiesel
(1928―2016)

アメリカのユダヤ系作家。ルーマニア生まれ。ナチスユダヤ人強制収容所の生き残りの一人。第二次世界大戦後フランスのパリに移り、パリ大学を卒業。1956年アメリカのニューヨークに移住、1963年アメリカの市民権を獲得。1970年ニューヨーク市立大学、1976年ボストン大学の教授。強制収容所で父親や姉妹が殺されるのを目撃し、その激烈な体験をもとに著作活動を行い、人権問題、人種差別反対運動を展開。代表的著作に、ナチ強制収容所で恐怖と絶望の日々を送った少年を主人公にした『夜』、イスラエル独立のためのテロリストになった青年の苦悩を描いた『夜明け』『昼』の小説3部作がある。その他の著書に『幸運の町』『死者の町』、戯曲『ザルメンまたは神の狂気』、随筆『沈黙のユダヤ人』『二つの太陽の間で』など。1986年にノーベル平和賞を受賞。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウィーゼル」の意味・わかりやすい解説

ウィーゼル
Wiesel, Elie

[生]1928.9.30. ルーマニア,シゲト
[没]2016.7.2. アメリカ合衆国,ニューヨーク,ニューヨーク
ルーマニア生まれのアメリカ合衆国のユダヤ系作家。別名 Eliezer Wiesel。第2次世界大戦期のユダヤ人虐殺(→ホロコースト)の,冷静ながら烈々たる証言を示す作品で知られる。1944年アウシュウィッツ収容所に家族とともに送られ,両親ら親族を失った。戦後はパリに移住,1948~51年ソルボンヌ大学で学び,卒業後フランスとイスラエルの新聞に執筆。1956年アメリカに移住し,1963年市民権を得た。1972~76年ニューヨーク市立大学教授を務め,1976年ボストン大学でアンドリュー・W.メロン記念人文学教授に就任。フランスでのジャーナリスト時代,作家フランソア・モーリヤックから強制収容所での体験の証言者となるよう促され,イディシュ語による第一作 "Un di velt hot geshvign"(1956)と,それを縮めたフランス語の『夜』La Nuit(1958)を執筆。『夜』と,『夜明け』L'Aube(1960),『昼』Le Jour(1961)の自伝的三部作で注目を集めた。ほかの著作に『エルサレムの乞食』Le Mendiant de Jérusalem(1968),評論『今日のユダヤ人』Un juif aujourd'hui(1977)など。それらの作品は,ホロコーストの生き残りとしての経験や,なぜホロコーストが起こったのか,それが明らかにする人間の本質とはなんなのかという倫理的な苦悩の解決の試みを反映する。作風にはユダヤの民話や瞑想的なハシディズム文学(→ハシディズム)の影響が認められる。1986年ノーベル平和賞受賞。

ウィーゼル
Wiesel, Torsten Nils

[生]1924.6.3. ウプサラ
スウェーデンの神経生物学者。カロリンスカ研究所で医学を修め (1954) ,アメリカのジョンズ・ホプキンス大学に招かれる。 1959年にハーバード大学に転じ,同大学教授 (74) 。同僚の D.H.ヒューベルと共同で大脳皮質の視覚野の構造,機能を詳細に解明し,大脳半球の機能分化を研究した R.W.スペリーとともに 81年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

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