翻訳|Hasidism
この語はヘブライ語のhasid(敬虔なるもの)に由来し,広くユダヤ宗教史上に現れた〈律法〉の内面性を尊重する敬虔主義の運動を指しているが,とくに狭義には18世紀の初頭ポーランドやウクライナのユダヤ人大衆の間に広まった聖・俗一如の信仰を主張する宗教的革新運動をいう。その創始者は〈よき名の主Baal Shem Tov〉と呼ばれるイスラエル・ベン・エリエゼルIsrael ben Eliezer(1698-1760)である。この運動は正統派からは異端視され,また知識階級からは迷信的なものとして軽視されてきたが,ブーバーによって再びその深い宗教的意味が見いだされ再評価されている(もっとも彼のハシディズム理解はあまりにも主観的にすぎるとして批判される面もある)。とくに注目すべきことはハシディズムと禅との間に共通の類似点のあることであるが,本質的にはまったく異なるものとみるべきであろう。
→ユダヤ教
執筆者:平石 善司
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…17世紀にはサバタイ・ツビが現れて〈救世主〉を名のり,カバラ運動は最高潮に達した。さらに18世紀以降,東欧でハシディズムがカバラを日常の信仰生活と密接に結びつけ,その思想的影響は現代のM.ブーバーや,G.ショーレムにも及んでいる。15世紀以降,カバラはキリスト教世界にも大きな影響を与えた。…
…〈唯一つ真に存在する光は神自体であり,万物は神の本質的な光から発せられる光線にほかならない〉。イスラム神秘主義(4)ユダヤ教 ユダヤ教においても,形式的律法主義に陥る危険に反対して神秘主義の運動があるが,特異なものとしては,主として13世紀にスペインで展開したカバラと18世紀初頭ポーランドやウクライナのユダヤ人の間に広まったハシディズムがある。カバラとはヘブライ語で〈伝承〉の意味であるが,ここでは神や世界に関して受け継がれた秘義による神智学的神秘説をいう。…
…またそれと同時に,ユダヤ風の音楽作品も西洋音楽遺産のなかに加わった(M.ブルッフの《コル・ニドライ》,ブロッホの《ヘブライ狂詩曲シェロモ》など)。 アシュケナジムのうち東ヨーロッパ,とくにポーランドやウクライナのユダヤ人たちは,18世紀の半ばに,ユダヤ神秘主義(ハシディズム)を興し,それに伴って,スラブ風なニュアンスに富む即興の母音唱法によるリズミカルな民衆的宗教賛歌ニーグンNiggunとそのダンスを生み出した。また彼らは,ドイツ語とヘブライ語の混成言語イディッシュ語によるフォーク・ソングの世界をも開花させた(《ドナ・ドナ》など)。…
…しかし,この偽メシアはトルコのスルタンに逮捕されると,イスラム教に改宗した(1666)。サバタイ騒動が残した深刻な精神的危機を克服する試みの中から,東ヨーロッパでハシディズム運動が起こった。ウクライナの貧民出身のバアル・シェムトーブBaal Shem Tov(1698‐1760)は法悦状態に没入し,祈禱において神と交わる神秘的救いの重要性を説いて,無味乾燥な律法主義にあきていたユダヤ人大衆の心をつかんだ。…
※「ハシディズム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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