ハシディズム(その他表記)Hasidism

翻訳|Hasidism

デジタル大辞泉 「ハシディズム」の意味・読み・例文・類語

ハシディズム(Hasidism)

18世紀中ごろに起こったユダヤ教神秘主義的運動。イスラエルベン=エリエゼルがウクライナ地方で創始

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改訂新版 世界大百科事典 「ハシディズム」の意味・わかりやすい解説

ハシディズム
Hasidism

この語はヘブライ語のhasid(敬虔なるもの)に由来し,広くユダヤ宗教史上に現れた〈律法〉の内面性を尊重する敬虔主義の運動を指しているが,とくに狭義には18世紀の初頭ポーランドやウクライナのユダヤ人大衆の間に広まった聖・俗一如の信仰を主張する宗教的革新運動をいう。その創始者は〈よき名の主Baal Shem Tov〉と呼ばれるイスラエル・ベン・エリエゼルIsrael ben Eliezer(1698-1760)である。この運動は正統派からは異端視され,また知識階級からは迷信的なものとして軽視されてきたが,ブーバーによって再びその深い宗教的意味が見いだされ再評価されている(もっとも彼のハシディズム理解はあまりにも主観的にすぎるとして批判される面もある)。とくに注目すべきことはハシディズムと禅との間に共通の類似点のあることであるが,本質的にはまったく異なるものとみるべきであろう。
ユダヤ教
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百科事典マイペディア 「ハシディズム」の意味・わかりやすい解説

ハシディズム

Chasidismとも。18世紀に東欧で興ったユダヤ教の敬虔主義的な宗教革新運動。イスラエル・バール・シェムトーブ〔1700-1760〕が,内面的・精神的な信仰を説いて創始,ユダヤ神秘主義(カバラ)を大衆へ広めた。指導者はツァディークと呼ばれ,これに従う者がハシード(敬虔なる者)とされる。正統派(敵対者すなわちミトナグディーム)からは異端とされたが,のちにハシディズムも正統派保守に位置づけられた。
→関連項目神秘主義ニーグンブーバー

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハシディズム」の意味・わかりやすい解説

ハシディズム
はしでぃずむ
Hasidism

ユダヤ教における神秘主義的傾向の強い宗教運動。イスラエル・ベン・エリエゼルIsrael ben Eliezer(バアル・シェム・トブBa‘al Shem ov'1700~60、称号よき名の主)により、18世紀中ごろウクライナ地方に始まり、急速に東ヨーロッパのユダヤ人大衆間に広まり、のちイスラエル、アメリカに及んだ。彼らは現在の生活における人間の救いを問題とし、そのために神との交わりに入ることを願う。ツァディークと尊称されるカリスマ的な指導者を中心に、エクスタシー的状態のなかでいっさいの思考感情を神に集中して祈り求める。

[石川耕一郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハシディズム」の意味・わかりやすい解説

ハシディズム
Hasidism

18世紀ポーランド南部に起ったユダヤ教内部の敬虔主義運動。バール・シェム・トブによって始められた精神運動で,彼は真の宗教は,伝統的なラビ的学問や禁欲的遁世にはなく,すべての存在に内在する神を認識することにあり,ひたすらな祈りによりこの認識が可能になると説いた。運動は,エリア・ベン・ソロモンなど正統派タルムード学者たちの反対にもかかわらず,弟子たちの活動によってまたたくまにポーランド全域に,さらには東ヨーロッパ各地に広まり,各地に教授団や教理研究所が設けられた。しかし,教理の発展は逆にラビ的伝統を引入れることとなり,19世紀後半にはハシディズムも正統ユダヤ教のなかに組入れられた。第2次世界大戦におけるユダヤ人迫害と研究所の焼失などで多くの信奉者はアメリカ合衆国やイスラエルに渡り,現在この両国が中心となっている。この派の代表者 M.ブーバーもイスラエルに渡った一人である。

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世界大百科事典(旧版)内のハシディズムの言及

【カバラ】より

…17世紀にはサバタイ・ツビが現れて〈救世主〉を名のり,カバラ運動は最高潮に達した。さらに18世紀以降,東欧でハシディズムがカバラを日常の信仰生活と密接に結びつけ,その思想的影響は現代のM.ブーバーや,G.ショーレムにも及んでいる。15世紀以降,カバラはキリスト教世界にも大きな影響を与えた。…

【神秘主義】より

…〈唯一つ真に存在する光は神自体であり,万物は神の本質的な光から発せられる光線にほかならない〉。イスラム神秘主義(4)ユダヤ教 ユダヤ教においても,形式的律法主義に陥る危険に反対して神秘主義の運動があるが,特異なものとしては,主として13世紀にスペインで展開したカバラと18世紀初頭ポーランドやウクライナのユダヤ人の間に広まったハシディズムがある。カバラとはヘブライ語で〈伝承〉の意味であるが,ここでは神や世界に関して受け継がれた秘義による神智学的神秘説をいう。…

【ユダヤ音楽】より

…またそれと同時に,ユダヤ風の音楽作品も西洋音楽遺産のなかに加わった(M.ブルッフの《コル・ニドライ》,ブロッホの《ヘブライ狂詩曲シェロモ》など)。 アシュケナジムのうち東ヨーロッパ,とくにポーランドやウクライナのユダヤ人たちは,18世紀の半ばに,ユダヤ神秘主義(ハシディズム)を興し,それに伴って,スラブ風なニュアンスに富む即興の母音唱法によるリズミカルな民衆的宗教賛歌ニーグンNiggunとそのダンスを生み出した。また彼らは,ドイツ語とヘブライ語の混成言語イディッシュ語によるフォーク・ソングの世界をも開花させた(《ドナ・ドナ》など)。…

【ユダヤ教】より

…しかし,この偽メシアはトルコのスルタンに逮捕されると,イスラム教に改宗した(1666)。サバタイ騒動が残した深刻な精神的危機を克服する試みの中から,東ヨーロッパでハシディズム運動が起こった。ウクライナの貧民出身のバアル・シェムトーブBaal Shem Tov(1698‐1760)は法悦状態に没入し,祈禱において神と交わる神秘的救いの重要性を説いて,無味乾燥な律法主義にあきていたユダヤ人大衆の心をつかんだ。…

※「ハシディズム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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