改訂新版 世界大百科事典 「ウスタビガ」の意味・わかりやすい解説
ウスタビガ
Rhodinia fugax
鱗翅目ヤママユガ科の昆虫。かなり大型のガで,開張は雄が8cm内外,雌が10cm内外。雄は赤褐色で雌は黄色,翅の形も性によって異なり,雄のほうが細長い。前・後翅とも翅の中央に大きな透明紋がある。幼虫は緑色の芋虫で,後胸の背面に1対の肉質突起がある。さわると頭胸部をもち上げて,キー,キーという摩擦音を発する。幼虫の食草はクヌギ,コナラ,カシワなどブナ科のほか,サクラ,ケヤキ,カエデなど。卵の状態で越冬し,春に孵化(ふか)した幼虫は6月ころに老熟して蛹化(ようか)し,秋に羽化する。繭は緑色,長い柄で枝にぶら下がっており,カマス形をしているのでヤマカマス(山叺)と呼ばれる。緑色なため葉の茂っているときは目だたないが,秋の落葉後には鮮やかに見える。日本のほとんど全土に分布し,成虫はよく灯火に飛来する。
執筆者:井上 寛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報