ハンノキ(読み)はんのき(英語表記)alder

翻訳|alder

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハンノキ」の意味・わかりやすい解説

ハンノキ
はんのき / 榛木
alder
[学] Alnus japonica (Thunb.) Steud.

カバノキ科(APG分類:カバノキ科)の落葉高木。ハリノキ、ヤチハンノキともいう。高さ20メートルに達する。樹皮は灰色、老木では縦に割れる。葉は互生し、長楕円(ちょうだえん)形で長さ6~13センチメートル、縁(へり)に浅く切れ込む鋸歯(きょし)がある。雌雄同株。秋に球果状の花穂を直立し、早春に開花する。堅果は小さく扁平(へんぺい)で、狭い翼がある。湿地川原などに生え、ときに純林をつくる。北海道から九州に分布し、ウスリー地方や中国などにもみられる。水田地帯で稲掛け用に列植されることがある。材は器具、箱、鉛筆などに用い、樹皮からはタンニンをとり、染料とする。

 ハンノキ属は北半球の温帯を中心に約30種分布し、日本には10種が知られる。雌雄同株で、雄花序は前年の秋から枝上に現れる。二つの亜属に分けられ、ハンノキ亜属にはハンノキのほかにヤマハンノキ、カワラハンノキ、ミヤマカワラハンノキ、ヤハズハンノキなどがあり、雌花序は前年の秋に現れ、早春、葉に先だって開花する。冬芽に柄があり、夏季に多くの葉が緑色のまま落ちる。ミヤマハンノキ亜属は小高木または低木で、ミヤマハンノキ、ヤシャブシヒメヤシャブシオオバヤシャブシが属する。雌花序は冬芽に包まれて越冬し、冬芽に柄はなく、芽鱗(がりん)がある。堅果は翼が発達する。両亜属ともに陽樹で、湿地、川原、山地の谷沿いの斜面、岩礫(がんれき)地などに生え、ときに純林をつくる。根に根粒がつき、やせた土地によく育つので、砂防用に植えられる。

[菊沢喜八郎 2020年2月17日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハンノキ」の意味・わかりやすい解説

ハンノキ(榛木)
ハンノキ
Alnus japonica

カバノキ科の落葉高木。各地の山野の湿地や川岸に好んで生え,植林もされる。特に関東地方では水田のあぜなどに植えて,収穫した稲穂を干すための丸太の支柱に使うことが多い。幹は直立し,多数分枝する。葉は楕円形ないし長楕円形で先端は鋭くとがり,縁に細鋸歯がある。側脈は6~8対あり,葉柄は 2cmぐらい。早春に,葉よりも早く尾状花序を枝先につける。雌雄同株で,雄花序は紫褐色で枝先に垂れ下がり,雌花序は紅紫色の楕円形で同じ枝の雄花序の下方に直立する。果実は長さ2~3cmの楕円形の球果。材は薪炭,鉛筆,細工用に,果実は染料として絹織物や漁網の染色に用いた。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報