うそ発見器(読み)うそはっけんき(その他表記)lie detector

翻訳|lie detector

日本大百科全書(ニッポニカ) 「うそ発見器」の意味・わかりやすい解説

うそ発見器
うそはっけんき
lie detector

ポリグラフ一種で、犯罪捜査に利用されるものを、俗にうそ発見器という。脳波、筋活動、眼球運動眼振心拍呼吸など、多種類の生理的現象を同時記録する装置をポリグラフpolygraph(多現象同時記録装置、多用途監視装置)というが、犯罪捜査におけるポリグラフは、おもに呼吸、脈拍、皮膚電気反射(精神電気反射)、血圧を同時記録する。うそ発見で主になる生理的指標は、皮膚電気反射であり、通常は手のひら面の2点に電極を置き、その間の皮膚抵抗の変化を測定する(通電法)。測定法には、ほかにこの2点間の電位変化をとらえる電位法がある。

[本明 寛・石井康智]

うそ発見のメカニズム

うそ発見の技術は長い歴史をもつが、いくつかの生理的現象を同時記録するポリグラフ法は、1950年代初めにアメリカで確立した。わが国では、それとは別に独自の発達を遂げ、50年代後半には、科学警察研究所(NRIPS)を中心に広く採用され、並行してアメリカのポリグラフ法も取り入れられ、科学的検討が加えられた。

 ポリグラフは、医学、精神生理学、心理学、人間工学などの領域で広く利用されている。どのような生理的現象を記録するかは、研究する対象や利用目的に応じて異なる。たとえば、睡眠研究では、脳波、筋活動、眼球運動の記録が不可欠である。うそ発見器は、情緒的緊張が、おもに自律神経のうちの交感神経に優位に働くときの生理的現象を記録する。たとえば、故意にうそをつかなければならない場面や入学試験に臨むときのように、自我関与が強く働くときには、胸がどきどきしたり、呼吸が乱れて浅くなったり、体が固くなっていたり、手に汗を握ったりする。そこで、被疑者だけが強い反応を示すであろうと予想される事柄を、質問内容に組み入れ構成することによって、情緒的体験を引き起こし、そのときの生理的現象を客観的にとらえようとする。

[本明 寛・石井康智]

実施上の注意

検査の実施にあたっては、以下のような問題点が考慮される。すなわち、初犯者か累犯者か、また犯罪の軽重で心理的構えが異なり、生理的現象には個人差があるので、うそを引き出す質問の内容を適切に組み合わせなくてはならないこと、記録結果の解釈・適用にあたっては慎重な配慮が必要であること、などである。

[本明 寛・石井康智]

『三宅進著『ウソ発見――研究室から犯罪捜査へ』(中公新書)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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