改訂新版 世界大百科事典 「ウミイグアナ」の意味・わかりやすい解説
ウミイグアナ
marine iguana
Amblyrhynchus cristatus
イグアナ科のトカゲで,海に潜って海藻を食べるという,他のトカゲ類には見られない習性をもつ。ガラパゴス諸島に分布し,とくにイスパニオラ島にすむ雄は繁殖期の婚姻色が鮮やかになる。全長1~1.5m,最大は1.8mに達する。雄のほうが大きく,頸部のたてがみ状飾りうろこも長い。海岸の岩場に集団で生息し,干潮時に海に潜って岩礁についた海藻を食べる。1回の潜水は20分ほどで,水深3m以内を側扁した尾をくねらせて巧みに泳ぐ。しかし求餌(きゆうじ)以外では進んで海に入ることはない。頭部の保護のためごつごつした奇異な容貌をしているが,性質はおとなしく,気分を損ねると鼻孔にたまった海水をふき上げる。海水を飲料とするため,体内に生じた余分な塩分は眼の前方に開いている塩腺から排出される。雌は海岸の砂地に穴を掘って2~3個の卵を産む。約110日で孵化(ふか)する。同じ島に分布するガラパゴスリクイグアナConolophus subcristatusは体長1.1mほどで,ウミイグアナとすみ分けて島の内陸部に生息している。餌はサボテンの新芽,果実などの植物質で,尾部はウミイグアナのように扁平ではない。狭い島における二つのイグアナの分化は,ダーウィンの進化論に好材料を提供した。
執筆者:松井 孝爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報