塩腺(読み)エンセン(英語表記)salt gland

デジタル大辞泉 「塩腺」の意味・読み・例文・類語

えん‐せん【塩腺】

塩類腺

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改訂新版 世界大百科事典 「塩腺」の意味・わかりやすい解説

塩腺 (えんせん)
salt gland

塩類腺ともいう。海鳥や海生の爬虫類にある分泌腺で,海水や餌とともに摂取した過剰な塩分体外排出する機能を持つ。この腺は一名鼻腺nasal glandとも呼ばれ,海鳥類では頭骨眼窩(がんか)の上に1対で存在する。排出された塩溶液は細い道管を通って鼻腔に運ばれ,鼻孔から体外に出る。海ガメ類でも塩腺が眼の近くにあり,塩溶液は涙となって排出される。また軟骨魚類にも直腸腺から変形した塩腺があり,硬骨魚類には腺ではないが,同じ働きをする塩類細胞がある。塩腺の働きは腎臓と違ってほとんど塩分(NaCl)の排出だけに限られ,また血液中の塩濃度がある値に達した時だけ活動する。しかし,その塩分排出能力は腎臓の10倍以上といわれる。すなわち,腎臓が排出できる塩濃度は0.3%程度にすぎないのに,塩腺は塩濃度5%の分泌物を排出する。これは海水の塩濃度の2倍に近い高濃度である。一般に,塩腺の塩分排出量は塩腺が大きいほど大きく,同一種でも淡水にすむものより海岸にすむものの方が塩腺は発達している。またアヒルなどを海水で飼うと,塩腺は肥大する。なお,塩腺は数種の陸生の鳥(ダチョウ,ミチバシリ,サバクシャコ)にも存在するが,この場合は高温に対する適応といわれる。

 植物ではギョリュウイソマツの葉にある塩腺が著名な例で,塩の体外への排出を行っている。表皮を覆っているクチクラ層は塩腺のところにだけ開口部がある。マングローブ植物ヒルギダマシにも塩腺がみられる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塩腺」の意味・わかりやすい解説

塩腺
えんせん
salt gland

海生の鳥類や爬虫類にある分泌腺で,体液中の余剰な塩分を濃縮して排出する機能を有する。通常頭骨の眼窩上縁に1対で存在し,この腺で生じた高濃度の塩分液は鼻孔から体外に出る。海での採餌後など多量の塩分が体内に入ったときに活発に機能し,腎臓よりはるかに能率的に塩分調節を行う。純粋の陸鳥は塩腺をもたない。

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世界大百科事典(旧版)内の塩腺の言及

【浸透圧調節】より

…(3)海生の鳥類(カモメ,ペリカンなど)や爬虫類(イグアナ)には鼻腔に開口する鼻腺から,またカメ類では涙腺から余剰の塩類を分泌する。これらは塩腺または塩類腺とよばれる。(4)海水よりもはるかに塩分濃度の高い塩湖にすむ甲殻類のアルテミアは口および肛門から水を取り入れ,過剰の塩類を10対のえらから体外に分泌する。…

【鳥類】より

…鳥類と爬虫類だけが尿酸を排出するが,これはどちらも陸生の卵生動物で,発生が卵殻の中で行われるので,水溶性の尿素ではつごうが悪いためである。 海岸や海洋にすむ鳥類と爬虫類(カメなど)は塩腺(塩類腺ともいう)と呼ばれる特殊な排出器官をもっている。塩腺は塩分を排出するだけの器官だが,海水の約2倍(尿の塩分濃度の15~20倍)の濃い塩水を排出する。…

※「塩腺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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