日本大百科全書(ニッポニカ) 「イグアナ」の意味・わかりやすい解説
イグアナ
いぐあな
iguana
広義には爬虫(はちゅう)綱有鱗目(ゆうりんもく)イグアナ科に属するトカゲの総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。種としてのイグアナIguana iguanaはグリーンイグアナともよばれ、メキシコ、西インド諸島、中央アメリカからブラジル南部、パラグアイに分布する。全長1.5~1.8メートル、尾が長く全長の3分の2ほどを占める。全身が細かい鱗(うろこ)に覆われ、頸部(けいぶ)から尾部にかけて背中線上に長い棘(とげ)状の飾り鱗が並ぶ。咽頭(いんとう)部には大きなひれ飾りが発達するが、雄のものが大きく、繁殖期にはこれを広げて頭を上下に振り、雌に対する求愛や縄張り(テリトリー)争いのディスプレーを行う。熱帯降雨林の水辺の樹上にすみ、タカなどの姿をみるとすぐに水中に飛び降りて隠れる。水中では、四肢を体側につけ、尾をくねらせて巧みに泳ぐ。地上での走行もすばやい。餌(えさ)は木の葉や果実など植物質のものであるが、幼時には昆虫もとらえる。雌は一度に30~40個ほどを地上に産卵するが、現地のインディオは、とらえた雌から食用のための卵を取り出し、腹部を縫ってから森に放ち、ふたたび卵を得ようとするといわれる。イグアナ科Iguanidaeは約50属700種に及ぶ大きなグループで、マダガスカルに2属、ポリネシアに1属(フィジーイグアナBrachylophus fasciatusなど2種)が生息する以外は、すべてアメリカ大陸に分布する。
[松井孝爾]