改訂新版 世界大百科事典 「ウメバチソウ」の意味・わかりやすい解説
ウメバチソウ (梅鉢草)
(common)grass-of-Parnassus
Parnassia palustris L.
山地の日当りのよい湿地に生えるユキノシタ科の多年草で,高山に多い。花の形が紋章の梅鉢紋に似ているので,この和名がつけられた。数枚の根出葉には長い柄があり,葉身は円心形で先がややとがり,掌状の脈がある。夏から秋にかけて,高さ10~45cmの花茎が1~数本直立し,先端に1個の白い花をつける。花茎の中部には1枚の無柄の葉があり,葉身の基部は多少,花茎を抱いている。花の直径は2~2.5cm。緑色の萼裂片と白色の花弁は5枚ずつ。おしべは10本あり,そのうち,花弁と向かい合う5本は仮雄蕊(かゆうずい)になっている。仮雄蕊は,上部が多数糸状に分裂して,先端には球状の黄色の腺体がある。子房は卵球形で上位,花柱はほとんど発達せず,子房の頂部に4分裂した柱頭がある。北半球の温帯,寒帯に広く分布し,日本でも全土に広がっている。近縁種の一つにシラヒゲソウP.foliosa Hook.f.et Thoms.ssp.nummuharia(Maxim.)Kitam.et Murataがあり,花弁のふちがひげのように糸状に多数深く切れ込んでいる。
執筆者:若林 三千男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報