知恵蔵 「エアバスA380」の解説
エアバスA380
A380は総2階建ての構造で、最大で800席を上回る客席を設置することができる。また、機内の広さを生かして、ラウンジ、バーやシャワールームなどを設けることもできる。座席数はファーストクラスやビジネスクラスの設定で、航空会社などによって異なるが、各クラス合わせて500席から600席ほどの仕様で運航されている。ターボファンエンジン4基を搭載し、巡航速度はマッハ0.85(時速約1000キロ)、航続距離は約1万5000キロと、実用上最大級のクラス。離陸滑走距離も3000メートルほどになるため、就航できる空港は限られるが、従来の超大型機と燃費・騒音なども同程度には抑えられ、床面積はおよそ1.5倍にまで広がった。エアバス社は「低騒音で、低二酸化炭素排出で環境に優しい」としている。昇降には、一般的な2本のボーディングブリッジ(搭乗橋)でも対応できるが、時間短縮のためには2階部分に接続する3本目のブリッジの増設が望まれるなど、超大型機ゆえの設備対応も求められ、受け入れ空港の充実が課題となっている。なお、日本企業数十社が生産に参加し、ボーイング777ほどではないが、部材には日本の炭素繊維技術などが生かされている。
当初は「空飛ぶホテル」などともてはやされ、現在までに200機弱が就航しているが、新規受注は低迷している。かつては、日本の航空会社でも導入が検討されたものの、大きな機体による運用の利便性が確保しにくいことなどから見送られていた。ところが、16年1月になって破綻(はたん)後のスカイマークを支援する全日空が、3機を約1500億円で導入すると発表。その背景として、スカイマークの大口債権者だったエアバス社の強い意向が働いたと見られている。超大型機は、1座席当たりの運航コストは安くなるが、収益を上げるためには多数の搭乗客を確保することが必要となる。このため、同機が18年度に投入される見込みのホノルル線では、激しい運賃競争が進むと予想されている。
(金谷俊秀 ライター/ 2016年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報