改訂新版 世界大百科事典 「エビガラスズメ」の意味・わかりやすい解説
エビガラスズメ (蝦殻天蛾)
Agrius convolvuli
鱗翅目スズメガ科の昆虫。この科のガの中では大型で,開張9cm内外。腹部の側面から背面にかけては赤色で,各節は帯状に黒い。一般にこの科のものは,口吻(こうふん)(舌)の発達したものが多いが,エビガラスズメの舌はとくに長く,のばすと10cmに達する。夕暮時に花みつを求めて飛び回り,夜間灯火にも飛来する。アメリカ大陸を除くほぼ世界全域に分布し,飛翔(ひしよう)力が強いため長距離を移動できるので,大洋上の島々にも土着している。幼虫の色彩は変異があって緑色から褐色まであるが,第8腹節背面にある尾角の先は黒く,各節側面の気門の周囲も黒い。幼虫はサツマイモ,ヒルガオ,アサガオなどヒルガオ科の植物につく。このため英名はconvolvulus hawk-moth(ヒルガオ科のスズメガ)という。秋に老熟した幼虫は土中に潜って蛹化(ようか)し越冬する。北アフリカからイギリスやヨーロッパ大陸へしばしば渡来するが,夏に羽化した雌の産んだ卵からの子孫は,冬の寒さに耐えられずに死んでしまう。
執筆者:井上 寛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報