改訂新版 世界大百科事典 「ヒルガオ」の意味・わかりやすい解説
ヒルガオ (昼顔)
bindweed
Calystegia japonica Choisy
ヒルガオ科の夏緑の多年草で,アサガオに似た花を昼間に開く。地下に肉質の根茎を有し,それより細い,他物に巻きつくつるを伸ばす。葉は互生し,長柄に長さ6cmほどの長卵状ほこ形の葉身をつける。盛夏に,葉腋(ようえき)から出る長さ5~10cmの花梗に淡紅色の漏斗状花を単生する。萼片は5枚で,その基部に2枚の発達した苞葉がある。花冠は浅く5裂し,朝に開き午後にしぼむ1日花で,径約6cm。耕地の路傍や河川敷などの人里的な場所に多く,日本から東アジアの温帯に広く分布する。若芽は野菜として食用にされ,また全草を乾かしたものは漢方で狗狗秧(くくおう)といい,利尿,強壮薬として用いられる。よく似たコヒルガオC.hederacea Wall.は名まえのように全体が小型で,花も径4cm以下と小さい。ヒルガオよりも雑草的で,耕地だけでなく,鉄道線路わきなど都市域にも多く見られ,インドから東アジアにかけて広く分布する。若芽は食べられ,全草は薬用にもされる。ハマヒルガオC.soldanella R.Br.(英名sea bindweed,sea bells,scurvy grass)は暖地の海岸砂浜に多く,茎は地表や地下を横走し,円腎形の葉をもっている。世界に広く分布する。
ヒルガオ科Convolvulaceae
世界に広く分布する双子葉植物合弁花類の植物。多くはつる性であるが,一部に木本となるものがあり,つる性のものはアサガオに代表されるように細長な茎で他物に巻きつく。葉は単葉で互生し,ごく一部のものは,寄生植物のマメダオシのように鱗片状に退化している。植物体には乳管が発達し,切ると白い乳液が出るものが多い。花は通常5弁からなる合弁花だが,深く切れ込んだり,離弁のものもある。萼片は5枚,花後も宿存している。子房は上位で,1~2室,ときに3室,あるいは隔壁でさらに仕切られ4室状になる。各室に1~2個の胚珠を有する。果実は大部分が蒴果(さくか)。分布の中心は熱帯から亜熱帯の温暖な地域だが,温帯域まで分布圏を広げている。約50属2000種からなる。寄生植物で,鱗片状の葉と小さい花をつけるマメダオシの仲間と,葉を有し通常大きな合弁花をつけるヒルガオの仲間に2大別される。アサガオ,ルコウソウ,マルバルコウソウのように,合弁の大きな花をつける種属の多くが観賞用に栽植され,ヨウサイ(甕菜)のように若芽や葉を野菜に利用する種も多い。サツマイモは中米原産で,そのいもの高いデンプン生産能力からヒルガオ科ではもっとも重要な栽培植物になっている。トコンのように薬用とされるものもある。
執筆者:堀田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報