改訂新版 世界大百科事典 「ヤマブドウ」の意味・わかりやすい解説
ヤマブドウ (山葡萄)
Vitis coignetiae Pulliat
山地に生えるブドウ科の大型落葉つる植物。つるは巻きひげで,他の木にからまって長く伸びる。葉は互生し,五角状の円心形で大きく,長さ30cmに達することもあり,普通は浅く3裂し,裏面には密に赤褐色のくも毛がある。花は小型,黄緑色で,総状花序について6月ころに開き,開花するとき,花弁は脱落する。果実は球形で径約8mm,秋に熟して黒紫色となり,酸味があるが食べられる。クマやサルなどの野生動物は,好んでこれを食べる。果汁をしぼってブドウ酒を作ったり,また若芽も少しすっぱみがあるが,食べることができる。秋には美しく葉が紅葉する。
エビヅルV.ficifolia Bungeは山野に普通に見られる雌雄異株のつる性植物。葉はヤマブドウに似て小型,長さ5~15cmで変異が多く,多くは3浅裂しているが,ほとんど卵形で分裂しないものから,深く3~5裂するものまである。特に葉が深く裂けるものはキクバエビヅルf.sinuata(Regel)Murataとして区別される。葉の裏面は淡褐色のくも毛がある。果実は秋に黒く熟し,径6mmぐらいで食べられる。
サンカクヅルV.flexuosa Thunb.は山地にある落葉性のつる植物で,葉は三角状卵形で毛がない。果実は秋に藍黒色となり甘くて食べられる。やや太い茎を1m内外に切って直立させると,切口から水が流れ出る。昔,山中で行者が峰道で水がないときに,このつるを切ってのどをうるおしたところからギョウジャノミズという一名がある。
アマヅルV.saccharifera Makino(一名オトコブドウともいう)は,山地に生え,サンカクヅルに似て葉は毛がなくて厚く,光沢があり,秋には美しく紅葉する。葉をかむと甘味があり,またつるを切ると甘い汁が出るところからアマヅルという。学名のsacchariferaは糖分を含んでいるという意味である。
執筆者:村田 源
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報