エミネスク(読み)えみねすく(英語表記)Mihai Eminescu

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エミネスク」の意味・わかりやすい解説

エミネスク
Eminescu, Mihail

[生]1850.1.15. モルドバ,ボトシャニ
[没]1889.6.15. ブカレスト
ルーマニア詩人。青年時代ウィーンベルリンに留学し,帰国後貧窮のなかで,深い幻滅,虚無感と生の歓喜の交錯するロマンティシズムの香り高い抒情詩や哲学詩を発表,ルーマニア最大の国民詩人として敬愛された。しかし生活苦と失恋痛手から 1883年に発狂,廃人として生涯を終えた。代表作は『皇帝プロレタリア』 Imparat şi proletar (1874) ,『カリン』 Cǎlin,『幽霊』 Strigoii (76) ,『第三書簡』 Scrisoarea III (81) ,『金星』 Luceafǎrul (83) などの詩,幻想的な哲学小説『哀れなディオニス』 Sǎrmanul Dionis (72) ,創作民話など。政治・社会評論もある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エミネスク」の意味・わかりやすい解説

エミネスク
えみねすく
Mihai Eminescu
(1850―1889)

ルーマニアの国民詩人。青年時代、ウィーン、ベルリンに留学し、帰国後種々の職業について貧窮に耐えながら、『皇帝とプロレタリア』(1871)、『第三書簡』『カリン』『グロサ』『金星』(1883)などの詩を発表。彼の詩には、民謡の影響、故郷モルドバの美しい自然への賛歌、東洋的な虚無感、きびしい社会批判などさまざまな傾向が混在しているが、ルーマニア語の美しさを最高度に駆使したその詩形式の完璧(かんぺき)さによって、古典としての生命を保っている。未完の小説『哀れなディオニソス』(1872)、『不毛の天才』、創作民話『涙から生まれた王子』などの作品もある。失恋の痛手、肉体的、精神的疲労から1883年に精神異常となり、6年後に孤独の生涯を終えた。

[直野 敦]

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