改訂新版 世界大百科事典 「エラブウミヘビ」の意味・わかりやすい解説
エラブウミヘビ
banded sea snake
Laticauda semifasciata
陸生のヘビのなごりが残っているウミヘビの1種。コブラ科エラブウミヘビ亜科の毒ヘビ。南西諸島の沿岸を含む東シナ海からインド洋にかけて分布し,サンゴ礁などの比較的浅い海に多い。全長1~1.3m,最大1.8mほどで胴が太く,黒潮に乗って本州沿岸にもやってくる。
エラブウミヘビ亜科Laticaudinaeの仲間はウミヘビながら鼻孔が側面に開き,腹板の幅がかなり広く,ひれ状に変形した尾は骨格の支えではなく単に皮膚の変化によるなど,陸生のヘビの形質が多分に残されている。さらにウミヘビでは唯一の卵生種でもある。南西諸島では産卵期が9~12月ごろで,大群が上陸して洞穴内に長径8cmほどの大きな卵を3~7個ほど産む。約5ヵ月で全長40cmほどの子ヘビが孵化(ふか)する。5種がベンガル湾からオセアニア近海まで分布し,南西諸島沿岸にはエラブウミヘビ,ヒロオウミヘビL.laticaudata,アオマダラウミヘビL.colubrinaの3種が知られる。これらは強い神経毒をもつが,性質がおとなしいため実際にはほとんど被害がない。サンゴ礁にすみ魚を主食としており,沖縄地方では薫製にして民間薬用にされるほか,食用や皮革製品に供される。
執筆者:松井 孝爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報